アメリカ横断皆既日食・考察編

Keietsu Sayama

2017年8月21日の北米衛星写真
2017年8月21日の北米衛星写真・・・白い斜線が撮影された時間に通過した本影錐:modis-todayより抜粋

(20)皆既日食・悲喜こもごも

右の北米西部衛星写真は、全てmodis-todayより抜粋したものを引用しました。

皆既日食前日のセイラムは多少の雲があったのですが、皆既日食当日は早朝から雲一つない晴天に恵まれました。 元々はナッシュビル近郊のギャラティンで観測する計画もありましたが、紀行文の通りオレゴン州の首都セイラム郊外で観測しました。

この時期は特に晴天率が良く、山火事が起こると中々鎮火するのが難しくなります。渡米前まで山火事の煙がオレゴン州の全域に渡っていましたが、皆既日食の一週間前にオレゴン州を覆うように雨が降りました。その効果は続き、幸運にもクリアな空で観測ができました。

上の写真を見ると中東部はやや雲の範囲が広く見られます。また予想通りサウスカロライナ州も海岸沿いの雲に覆われていましたが、YouTubeの映像によると薄雲越しにコロナが見られたそうです。

一番曇られたのがナッシュビルの都市部でした。ここも考えたのですが、ツアーで行くとしたらギャラティンでした。
2017年8月20日の北米西部衛星写真
2017年8月20日の北米西部衛星写真
水蒸気を発生させにくい寒流は、沿岸を冷涼で乾燥した気候にします。寒流の影響で熱帯地域に形成される砂漠が海岸砂漠です。寒流であるカリフォルニア海流の影響でオレゴン州は良く晴れています。

西海岸から雲が絶え間なく湧いて、夏にあまり気温が上がらず霧が発生しています。これは夏の暖かくて湿った空気がカリフォルニア海流の影響で冷却されるためです。

右の衛星写真に見られる山々に囲まれた部分の盆地はウィラメットバレーと言います。ちょうど中央左の雲がウィラメットバレーの南部をかすめています。

ここはアメリカ合衆国オレゴン州の北西部、ユージーンの側の山から北側に流れコロンビア川に流れ込むウィラメット川に囲まれた地域です。オレゴン州の人口の約70%を占めています。ボルドーワインの産地、フランスのボルドー地方と同じ葡萄の栽培に適した北緯45度前後に位置するため、ワインの産地としても知られるようになっています。

実際にセイラム南部の観測好適地にワインの産地があり、そこを皆既日食の中心線が通過していました。
2017年8月21日の北米西部衛星写真
2017年8月21日の北米西部衛星写真
右の衛星写真は皆既日食の翌日に撮られたものです。ウィラメットバレーも全域が雲に覆われています。確かに当日の朝は雲が多くて多少の肌寒さはありました。皆既日食が昨日で良かったです。このようにいつ曇られるか分からないのが皆既日食の魅力です。それだけに晴れてクリアな空で見られた時の感動は素晴らしいものがあります。

日食とは関係のない話題になりますが、メキシコのカリフォルニア半島から北北西に延びるセントラル・バレーとオレゴン州のウィラメットバレーからワシントン州のシアトルとカナダのブリティッシュコロンビア州にあるバンクーバー島。

個人的にはサンアンドレアス断層の延長線上に見えてしまいます。ですがオレゴン州に地震が殆ど起こらないことを考慮すると、やはりカリフォルニア州の海岸を沿うようにしてサンアンドレアス断層が続いているとするのが自然な流れでしょう。但しオレゴン州の沖にはカスケード沈み込み帯があり、その南部末端がサンアンドレアス断層に続いているのでオレゴン州にも多少の地震は発生します。カスケード沈み込み帯の影響で造山運動がオレゴン州の海岸山脈を形成したのでしょう。
2017年8月22日の北米西部衛星写真
2017年8月22日の北米西部衛星写真

NASA's EPIC View of 2017 Eclipse Across America

(21)赤い羽根共同募金のようなプロミネンス

自分でもプロミネンスの撮影は行ったのですが、超望遠に長焦点レンズには叶いません。YouTubeで撮影者の画像から考察したいと思います。

このプロミネンスの撮影者はRainbow Astroを運営している方で、Byoung Jun Jeongさんと言います。赤道儀を作っている会社のようです。この赤道儀をタカハシ製の望遠鏡に付けて撮影したのがYouTubeにupされた動画です。プロミネンスが大好きな被写体なので、自分もここまで撮れるようになりたいです。

このプロミネンスは一見すると赤い羽根共同募金のようなプロミネンスに見えます。非常に素晴らしいです。
プロミネンスの出現1
プロミネンスの出現1
YouTubeの画像から見ると、月の太陽の縁に沿って撮影しています。全部で3周ほどですが、プロミネンスが目立った部分をキャプチャーして右の写真の並びにまとめました。

肉眼ではホンの淡く紅い光にしか見えないのですが、強拡大で解像度の良いレンズだとこのように素晴らしく見られます。肉眼でプロミネンスを見る機会は、皆既日食が起こる数分に限られます。しかも都合よくプロミネンスが出現するワケではないので、運も必要となってきます。もちろん曇られると全く見られなくなります。太陽そのものなので、薄雲越しに撮影成功された方もいます。

細い細い金環日食でも露出オーバーで撮影するとプロミネンスが見られます。太陽の光は直接見ることになるので、ファインダー越しに撮影しないと目が焼けてしまいます。
プロミネンスの出現2
プロミネンスの出現2
帰国後に太陽フレアの大爆発があり、北極圏で大規模なオーロラが見られたことは記憶に新しいです。その影響でアメリカ横断皆既日食もプロミネンスが鮮やかに見られたのかも知れませんね。

ちょうど第三接触のダイヤモンドリングが、赤い羽根共同募金のようなプロミネンスと重なってしまいました。でもこのようなコラボレーションも中々発生しないし、滅多に見られないものです。

第三接触のダイヤモンドリングは、やがてプロミネンスを覆い隠してしまいました。これでアメリカ横断皆既日食も考察編のページも終わります。長い間お付き合いをいただき、ありがとうございました。
 プロミネンスの出現3
プロミネンスの出現3

2017 North America Total Solar Eclipse Close-up Real-time 4K

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