ザンビア皆既日食

(1)アフリカ大陸初上陸
13年前から日食を追いかけている私は、アフリカ大陸へ初めて足を踏み入れました。さすがに日本からアフリカへ遠征するのは遠く感じます。成田空港を離陸し香港経由で翌日南アフリカのヨハネスブルクに到着。すぐルサカ便に乗り継ぎ夕方近くになってやっとホテルに着きました。待ち時間も含めると丸一日飛行機に乗っていた事になります。今回は1999年ブルガリアツアーで御一緒したSさんと同室にしました。
2001年6月21日の皆既日食帯地図
2001年6月21日の皆既日食帯地図
これから昼食を取ります。出された食事は塩味付の焼豚。目の前に食べ物が出されるとパブロフの犬状態になってしまう私は、早速肉に齧りつきました!でもなぜか脂身が骨より堅く焼かれて食べられません。止むなく赤身だけを食べました。昼食後に一万円をザンビアの通貨と1リットルのペットボトル入りの水で交換しました。

部屋の風呂場は蛇口と風呂桶しか無く、新しいお湯を流すスペースが何もありません。仕方が ないのでペットボトルにお湯を溜めてシャワーの代わりに使いました。
ヨハネスブルグ空港・南アフリカ航空
ヨハネスブルグ空港・南アフリカ航空
(2)ルサカの夜
バイキング方式の夕食を食べ終え、ホテルの中庭へ行ってみます。なんと憧れの星座南十字星が既に見えています。1994年のチリ以来なので大変うれしいです。

ケンタウルス座のα・β星も凄く綺麗!大型の双眼鏡を用意した方が南十字星β星左横にピントを合わせてくれたので覗いて見ると、宝石箱と言う星団も肉眼でハッキリ見えました。初めて見る星座に興奮します。今日は移動が多く殆ど寝ていないので部屋に帰ってすぐ寝ましたzzz
南十字星
南十字星(イメージ)
翌朝、目が覚めたの午前4時!アフリカ南部は冬至で夜が長いのです。同室のSさんも起きたので機材を持ってホテルの中庭へ行きました。既に何人か起きていて夜空の観測をしています。今度は、リニア彗星を見せて貰いました。既に四等級らしく彗星のコマだけがボヤーッと見えます。理由はダストの尾が殆ど無くて、イオンの尾があるのでそう見えるとのこと。明け方近いのでホテルの外に広がる芝生から東の方角を見ました。すると新月一日前の28日月が土星とアルデバランと共に三角形を作りながら昇ってきました。 日食前日の月
日食前日の月
(3)郵便局に行く
今日は明日の観測本番に備えて、リハーサルをする日だけど本番一発観測タイプの私は暇を持て余してました。添乗員のTさんに現地の切手を買いに行きましょうと提案し、お暇な殿方と共に切手を買いに出かけました。本来なら外へ出たら危ないのでホテルの中にいた方がいいと言われているけど、殿方が四人でT嬢を囲むようにして歩けば安全だろうと言う事で、早速郵便局まで歩きました。
ホテルの受付
ホテルの受付
日本大使館向かいにあるInter Continentalと言うホテルで、彼女が郵便局の場所を聞いてます。暇な我々はホテルを見渡したり、アメリカ隊の様子を伺ったり。最もこんな高そうなホテルならツアー代もかなりupする訳で、シャワー無しのホテルが我々にはちょうどいいのかも。

郵便局の場所を確認したT嬢と共に早速御立派ホテルを出て郵便局行脚しました。途中の道端でアフリカンスタイルの婦女が現れた時はカメラを持って来ていないのをどれだけ悔やんだことか。
ホテルの中庭
ホテルの中庭
やがて青い建物の郵便局が見えてきました。切手は五種類あり葉書に使えるのは1000クワチャらしい。

1000Kのシート5枚買って、後は個人で欲しい切手を買いました。冬至でもここは北緯15度なので、昼間は30℃近くになります。夜は15℃以下に下がるようです。この気温、夏至の弘前そのものです。ホテルに戻ると観測リハーサルが終わる頃でした。明日はぶっつけ本番の観測となります。
ザンビアの日食記念切手
ザンビアの日食記念切手

(4)感動のダイヤモンドリング
今日は皆既日食。雲一つない快晴で8回目もいただきです。友人から貰ったフィルターを500mmF8レンズフードに輪ゴムで固定します。これは国際光器が販売しているアストロソーラーフィルターと言う、一見して銀紙のようなものです。太陽が白く映り自由に加工できます。2倍のテレコンを付けて1000mmF16にしました。太陽高度が低いので上から楽にファインダーを覗けるアングルファインダーを使用。これは視野も倍に出来るので2000mmと言う驚異的な焦点距離でピントを合わせます。右の写真は食分30%欠けた時点で撮影したものですが、黒点がゆっくりと月に呑み込まれてゆくのが分かります。
新月に呑み込まれる黒点
新月に呑み込まれる黒点
90%まで欠けてきて心臓の鼓動が早くなってきました。95%まで欠けた頃、別に用意した皆既日食専用のカメラにレンズを取りつけます。フィルターを取って準備。他は24mmF3.5を本影錐撮影用にします。時間は待ってくれません。手早く作業を済ませ太陽の光が徐々に失われるのを確認しつつ1000mmのピントを合わせ、第二接触のダイヤモンドリングを迎えました。呆れる程に何回も見ているはずなのになんて素晴らしい光景なんだろう!プロミネンスは赤々としていて、コロナは縦方向に見えている。木星も見えている。敷地の廻りは360゜の夕焼けで太陽に行けば行くほど暗くなる。予定通りに食の最大まで一段ずつ露光時間を長くしました。 感動のダイヤモンドリング
感動のダイヤモンドリング(第二接触)
沈黙の闇の中、回りには乾いたシャッターの音だけが響いています。別のカメラで大地に映った月の影の移動も撮ります。あまりの美しさに溜息さえつくのも忘れて…第三接触に向けて今度は露光時間を短くします。たった3分間に2台のカメラを駆使して神経まで張り詰めます。ファインダー中央に太陽がきていないのを気付かないまま月の縁から彩層の赤々とした大気が見えてきました。まもなくダイヤモンドリング。2000mmで見たファインダーは、まさに圧巻!!月の山と谷がハッキリ見えた頃ついに太陽の光が顔を出しました。まるでビーズ状の木漏れ日のような…2つの独立した光が4つになりやがて1つにまとまりながらだんだん強くなる光を見つめて… 極大期型のコロナ
極大期型のコロナ
光が眩しくなった頃フィルムもなくなり自動巻き上げの音が響きました。部分食専用のカメラに1000mmを取りつけフィルターも付けます。今回も前回同様丸いコロナでした。月の影の移動は南半球なのでシベリアで見られた方向とは逆に進みました。まず一安心。でも部分食も貴重な天文現象なのでしっかり撮影して気温のDATAも取りました。皆既中は15℃まで気温が下がりましたが寒さを感じるより興奮と感動の方がより強く感じました。

二年ぶりの皆既でしたが、この二年間もあっと言う間でした。第四接触も撮り終えて全て撮影が終了しました。すっかり元の姿に戻った太陽はだいぶ地平線に傾いています。機材の撤収は済んでいないけど皆で観測成功の祝杯をあげます。
ビーズ・ダイヤモンドリング
ビーズ・ダイヤモンドリング(第三接触)
最大接触 第三接触30秒前 第三接触
皆既中の本影錐の移動(南半球)

(5)ザンビアの元気な子供たち

翌朝早くも別れがやってきました。女性全員とお金持ちの男性はビクトリアの滝を見る ため、バスで十時間かけて移動します。残った我々7人は色気のない殿方ばかり。華のあるバスを見送り、殿方達も空港行きのバスに乗り込む。ルサカ発の飛行機は夕方なので、途中ザンビア初代大統領の官邸に行きます。官邸と言っても日本のような立派な建物ではなく、一軒の民家でした。官邸の近くには子供達がたくさんいました。
私の観測風景
私の観測風景
殿方の一人がビデオカメラで彼らを映すと段々集まってきます。ファインダーを子供達に向けるとビデオカメラに一点集中して色んなポーズを取ります。子供達が元気なのは国が発展する良い証拠です。

ところがツアー客の一人がペンをあげようとしたら、子供達の取り合いになりました。この凄まじいエネルギーを何かに使えないものか…彼らには順番と言う概念が無いようです。混乱と騒動の中バスは空港へ向かって走り始めました。
ザンビアの子供たち
ザンビアの子供たち

(6)ザンビアの日常
話は前後しますが、皆既日食当日は部屋から観測場所が近いので用を足しによく往復します。部分日食直前に部屋まで戻ると、ホテルの従業員から日食グラスをくれと言われます。それらは観測場所に置いてあるし早く用を足したいので断ります。なぜ彼らはねだるのでしょう!?それは今日だけ見られる天文現象よりもこれから食べなきゃならないパンの方が必要だからです。私達は無料で貰えますが彼らは買わなければ手に入りません。
ルサカの露天商
ルサカの露天商@
それでたくさん持っていそうな日本人に日食グラスをねだるのです。我々は子供の頃ガラスをロウソクであぶり、ススを付けてから太陽を見ると安全に見られる事を理科の授業で教わっています。ザンビアでは誰一人として煤の付いたガラスで観察する方はいません。

日本人にねだるほど日々の糧を重視するのは、まるで敗戦直後の日本そのものでした。この国は左側通行なのでやたらと日本車が目に付きホテルの送迎車も日本語で非常口がそのまま書いていました。
ルサカの露天商
ルサカの露天商A
(7)遅れた帰国便
ヨハネスブルク→香港行きの便が離陸しました!3時間のフライト後機体は急に高度を下げインド洋のモーリシャスという島に着陸!?飛行機の燃料が残りわずからしく、ここで1時間給油するとの事。我々は外にも出られず観光の島で缶詰になりました。やっと離陸し香港へ。

機内で配られている新聞にも日食記事があったので羽野亜紀に似たスチュワーデスに全紙持ってきて貰いました。中国語で日食は日全食と言うんですね。
ルサカの露天商
ルサカの露天商B
結局飛行機は一時間の遅れを取り戻せず、乗り継ぎ便も出発してしまい次の便まで、6時間も待たされました。

航空会社が非を認めてお詫びに昼食を御馳走してくれるとの事。長い移動の後喫茶店のような店に着きました。バイキング方式で、好きな物を取って食べてもいいらしいのです。6時間遅れの便で成田へ帰国した時は午後8時半を過ぎていました。空港の中はアフリカのカラッとした空が嘘のような湿気です。6月21日に皆既日食を見終わったら時間の経つのがとても早く感じました
ルサカ空港にて
ルサカ空港にて
ザンビア・カリバ湖
ザンビア・カリバ湖@
ザンビア・カリバ湖
ザンビア・カリバ湖A
ザンビア・カリバ湖
ザンビア・カリバ湖B
ザンビア・カリバ湖
ザンビア・カリバ湖C

観測地の位置
観測地の位置・・・○印が観測点です     観測地のGPS 15°24´55.53" S  28°18´55.75" E  標高 1282m

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