正午中心食の概要 (UTC+10)

太平洋を通過する皆既帯
太平洋を通過する皆既帯…画像をクリックすると拡大されます

観測場所の天候

2016.3.9の本影錐の移動 この皆既日食帯は、2016年3月9日に西大平洋を通過します。
皆既帯の最初は熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々を通過するので、この地域では雲間からの観測となるでしょう。

Jay Anderson氏より抜粋した資料によると、 赤道をまたいで熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々では雲量が多くてあまり観測に向かないことが分かります。 晴天率を求めるなら、ミクロネシア連邦の島々が最適です。

皆既帯付近で一番晴れやすい地域は米領ウェーク島ですが、99%の部分日食となってしまいます。 一番無難なのは、グアム島から船舶をチャーターしてマリアナ海溝付近の皆既帯に行くしかありません。 ミクロネシア連邦に属するヤップ州の島々には僅かながら皆既帯が掛かる環礁があります。 ここでは、皆既帯が通過する島と環礁について天候の概略と共に説明します。


ミクロネシア連邦の国旗 正午中心食の情報とDATA

皆既日食は、太陽に月が隠された本影が円錐となって本影錐を形成します。 この本影錐が地球上を通過する時に上記のアニメでも表示していますが、 必ず明け方から通過が始まって夕方に終わります。 地球は球体なので、皆既帯の中心点である正午が中心食となります。 この二つの言葉をつなげた言葉が正午中心食と言います。

正午中心食が、皆既帯の中で最も継続時間が長いです。 本影錐が地上に接する面も明け方と夕方に起こる皆既日食より大きくなります。 ちなみに明け方で見られるインドネシアのムンタワイ諸島北パガイ島では、本影錐の幅が107.6kmです。 正午中心食では、本影錐の幅が155.0kmとなります。 地球の端から本影錐の接する幅が正午中心食から観測すると、47.4kmも広くなります。 正午中心食では3月の平均雲量は50%と低くなり、 皆既中の太陽高度も74度もあるので陸地なら観測地の最適な候補地です。

Silversea Silver Discoverer Xavier Jubier さんのサイトで正午中心食に表示されたDATAをよく見ると、Silver Discovererと言うクルーズ船に乗って 正午中心食で観測するような表示があります。それでこの船舶を良く調べると Silver Discoverer  と言うサイトが見つかりました。 そのサイトの上部に会社情報のリンクがあったのでクリックすると、インターナショナル・クルーズ・マーケティング株式会社(ICM) と言う日本の会社が運営していた船舶なのだそうです。
船の中では日本人コーディネーターが乗船し、
皆さまの船内生活を日本語でサポートいたします。
皆さまの船内生活を日本語でサポートいたしますので
クルーズが初めてのお客様、個人でご参加のお客様にも
安心してご乗船いただけます。

● 一部の寄港地観光が無料でご参加いただけます。
● 船内でのWi-Fiが無料でご利用いただけます。
※ Wi-Fiはおひとり様1日2時間までになります。
…と、2015年 日本人コーディネーター乗船クルーズ に書かれていました。右写真が実際に観測で使われる予定の客船です。 見るからに豪華客船で、クルーズ費用もどこまで高額になるか分かりません。 Silver Discovererのサイトを見ても皆既日食クルーズ船の旅は、募集もしていないそうです。 まだまだ企画段階と言うことでしょうか?出航地と寄港地や帰港地がどこになるか不明です。 Silver Discoverer Deck

Silver Discovererの甲板は、デッキ7と言う船の一番上にあります。 ここの甲板が狭く猫の額のようなサンデッキしかありませんので、 船員しか入れない特別なデッキに入れるものと思います。 2009.7.22の皆既日食は、ふじ丸の船員しか入れない特別なデッキで観測しました。 他にプールがあるデッキ5からも観測が可能です。眼視観測の方は、このデッキで観測されるかも知れません。 Silver Discovererは五層構造になっていて、客室はデッキ3〜デッキ6まで各階にあります。 船員や従業員の生活エリアがデッキ1〜2になっているかも知れません。 右の画像は、デッキ7にあるオープンカフェテラスです。この机と椅子を除いて観測場所が確保されるでしょう。

Central Total Solar Eclipse (皆既帯の正午中心食)
 10° 07´ 23.1"  N       △T=68.2s
148° 47´ 53.6"  E 
Magnitude at maximum     : 1.02246%
Moon/Sun size ratio      : 1.04499
total solar eclipse : 4m 09.4s

Event       Date Time (+10)    Alt    Partial
 (C1) : 2016/03/09 10:24:42.3 +58.9°   0.00%
 (C2) : 2016/03/09 11:55:07.4 +74.6° 100.00% 
(MAX) : 2016/03/09 11:57:12.0 +74.8° 102.24%
 (C3) : 2016/03/09 11:59:16.8 +75.0° 100.00%
 (C4) : 2016/03/09 13:30:25.7 +66.3°   0.00%

デッキ7の甲板 Silver Discoverer Deck7の見取図…デッキプランより抜粋


NASAによる南鳥島の衛星写真
NASAによる南鳥島の衛星写真…72%の部分日食しか見られません


ウェーク島の領旗 ウェーク島の地理

ウェーク島は、北太平洋で南鳥島の東に位置するアメリカ合衆国領の環礁です。 水没した死火山の縁に発達したサンゴ礁で出来た環礁で、3つの島があります。 19世紀中盤以降の殆どをアメリカが統治していますが、第二次世界大戦中は日本軍が占領し、名前も大鳥島に変わりました。 1945年9月4日に2日前の日本の連合国への降伏文書への調印を受け、ウェーク島の日本軍も連合国軍に降伏しました。

戦後はアメリカ軍の軍事的戦略上の重要な拠点地でしたが、1975年のベトナム戦争の終結と1989年の冷戦終結以来、戦略上の重要性は薄れました。 現在は軍事施設の殆どを撤収し、住人は空港と港湾施設の保守点検のため、軍人と民間人の約200人となっています。 ウェーク島の地図

ウェーク島はグアムや日本とハワイを結ぶ航空路上にあるため、 民間の貨物機や太平洋を横断して引き渡される小型機などの中継地・ 軍用機・旅客機の緊急着陸飛行場として使われています。 2本の滑走路の長さは2,438mと3,047m、現在は施設の建設が行われ滑走路は1本のみ。 港湾施設もありませんが、避難のための大型船の泊地が設定されています。 基本的には空港施設だけの島で、戦争時の遺構は存在するものの観光施設の類は全くなく定期航空路線もありません。


ウェーク島のDATA

ウェーク島は、今回の皆既帯から僅かに外れています。世界標準時から、ちょうど半日の12時間進んだ時差があります。 ウェーク島の西北にあるピール島の先端から、99.62%の部分日食が見られます。 ちょうど付近の皆既帯で皆既日食が見られる時間帯に、ダイヤモンドリング状態の太陽が見られるかも知れません。 ウェーク島のDATA

ウェーク島は米国の施設しかないので、一般人も訪れることは出来ません。 ここから約100km西北の海上では、3分35秒の皆既日食が見られます。 この海域では3月の平均雲量が42%と低くなり、 最大接触時の太陽高度も55度あるので、陸地なら観測地の最適な候補地です。

対流圏の循環によると、地球の赤道付近で上昇した空気が緯度30度付近まで北上した後、 下降し地表付近を南下して赤道に戻るハドレー循環により赤道付近は低圧部となって雨が多いです。 逆に緯度30度付近は常に下降気流があって亜熱帯高圧帯となり、雨が少なく乾燥気候となっています。 なので、この地域は晴れやすくなります。
Peale Island Cape (ピール島の西北にある岬)
 19° 19´  5.9"  N       △T=68.2s
166° 36´ 55.6"  E 
Magnitude at maximum     : 0.99366%
Moon/Sun size ratio      : 1.04247

Partial solar eclipse
Event       Date Time (+12)    Alt     Partial
 (C1) : 2016/03/09 13:22:25.1 +65.9°   0.00%
(MAX) : 2016/03/09 14:51:23.9 +54.5°  99.36%
 (C4) : 2016/03/09 16:12:05.8 +38.1°   0.00%

ピール島の西北にある岬が映った空撮写真
ピール島の西北にある岬が映った空撮写真…99.36%の部分日食しか見られません


ミッドウェー島の領旗 ミッドウェー島の地理

ミッドウェー島 (Midway Atoll) は、ハワイ-天皇海山列に属する元火山島。 火山島が沈降し、珊瑚礁が発達しました。 約2,800万年前にハワイのホットスポットで形成された火山島が沈降しつつ、プレートとともに現在の位置に移動しました。 面積は6.2km²。アメリカ領太平洋諸島に属します。地域の標準時間は、UTC-11を採用しています。 主な島はサンド島とイースタン島で、環礁の南部・東側にイースタン島、南部西側にサンド島があります。 両島とも平地で、丘陵はありません。

ミッドウェー諸島の地図 ミッドウェーは軍事的に重要な位置にあり、太平洋を横断する航空機の給油地となりました。 1940年の初め頃にハワイ防衛の拠点として、軍事基地化が進みました。 第二次世界大戦中の1942年6月4日にはこの環礁を巡り、近海で日本海軍とアメリカ軍との海戦が行われアメリカ軍が勝利しました。 日本はもし海戦に勝利した場合、ミッドウェー島を『水無月島』と改名し領土化することを予定。 直ちに占領体制を敷けるよう郵便局長など多数の文官を艦隊に帯同させましたが、敗戦によってその試みは潰えました。

冷戦期もアメリカ海軍の基地が置かれていましたが、冷戦終結後に島は自然保護区 (ミッドウェー環礁国立自然保護区)となることが決定され、軍事基地は1996年に閉鎖されました。 その後、エコツーリズムの場として観光客の受け入れが行われましたが、2002年に中止。

ミッドウェー諸島には数々の海鳥が生息します。 クロアシアホウドリの世界最大の繁殖地で、ミッドウェーの旗になっているコアホウドリも非常に多いです。 特にカモメ科の海鳥ではセグロアジサシ、クロアジサシ、ナンヨウマミジロアジサシ等のアジサシ類が多数生息しています。 その他にレイサンガモやレイサンヨシキリ等の固有種もいましたが、 外来種の侵入や狩猟によって多くが絶滅したり、絶滅危惧種になっています。 2011年、2012年、2014年にはイースタン島でアホウドリの繁殖が確認されています。 Pearl and Hermes Atoll

ちなみにミッドウェー諸島には皆既帯が通過していません。 その南東にパール・アンド・ハーミーズ環礁と言う、日本人には殆ど知られていない陸地があります。 皆既帯の北限界線から北西へ僅か10kmしか離れていないのですが、ギリギリ皆既帯から外れていました。


パール・アンド・ハーミーズ環礁の地理

パール・アンド・ハーミーズ環礁は、北西ハワイ諸島の北部に位置する環礁です。 1822年にイギリスの捕鯨船パール号とハーミーズ号の2隻が難破したことから、この名前が付きました。 砂でできた島がいくつかあり、その外側には大規模な珊瑚礁が発達しています。 島の面積は、すべて合計すると359,975m²です。

NASAによるイファリク環礁の航空写真 1899年(明治32年)5月20日、日本の帆船龍睡丸が時化に遭い、パールアンドハーミーズ環礁で座礁・難破しました。 乗組員16名は近くの無人島に上陸して3カ月以上生活した後、全員生還しました。 この話は後に、大道寺謙吉『龍睡丸漂流記』(明治36年刊)や須川邦彦『無人島に生きる十六人』 (少年誌「少年倶楽部」昭和16年〜昭和17年連載、昭和18年単行本化)に描かれました。 生還者が語った島の形状から、この島はSoutheast Islandと推測されます。

このSoutheast Islandが、最も皆既帯に近いです。 最大接触の食分は0.99795%と100%に近く、日付変更線を超えているので ダイヤモンドリング状態の太陽が2016.3.8の夕方に見られます。

最大接触の食分で比較すると、ウェーク島より皆既帯の近くに島があります。 ここから70km南の海上に皆既中心線が通過するので、2分36秒の皆既日食が見られます。 この海域は3月の平均雲量が50%となり、 最大接触時の太陽高度も30度あるので、陸地なら最適な観測地です。 これより東側は、皆既帯にかかりそうな島も環礁もありません。
Southeast Island (パール・アンド・ハーミーズ環礁南部)

 27° 47´ 18.1"  N       △T=68.2s
175° 49´ 07.2"  W 
Magnitude at maximum     : 0.99795%
Moon/Sun size ratio      : 1.03695

Partial solar eclipse
Event       Date Time (-11)    Alt     Partial
 (C1) : 2016/03/08 15:06:27.4 +44.7°   0.00%
(MAX) : 2016/03/08 16:22:24.3 +30.4°  99.79%
 (C4) : 2016/03/08 17:30:09.9 +16.2°   0.00%
パールアンドハーミーズ環礁の航空写真
パールアンドハーミーズ環礁 Southeast Islandの航空写真…東南方向から撮影されました

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