アルゼンチン皆既日食の概要 (UTC-3)

チリ中部とアルゼンチン中部を通過する皆既帯の7月雲量予報
チリ中部とアルゼンチンを通過する皆既帯の7月雲量予報


衛星観測から得られた7月の雲発生確率
衛星観測から得られた7月の雲発生確率と皆既帯付近の都市


アルゼンチンの皆既帯地図
アルゼンチンの皆既帯地図

南アンデス山脈の地形と気候

南アンデス山脈 南緯25度より南は南アンデスと呼ばれます。南アンデスは高原の広がる中央アンデスと違い、地形は険しくなります。アルゼンチンとチリの国境にあります。

アンデスが太平洋岸に迫った山脈であるため、アンデス西麓を領土とするチリの国土は非常に細長いです。南緯35度付近までは3,000m級の山が連なりますが、それ以南はやや高度を下げます。

チリの首都サンティアゴは、西部山脈と主脈の間の構造平野にあります。南緯42度以南はパタゴニア地方に入り、高度は2,000m程度。寒冷な気候と西風による降水で氷河地帯を形成します。

Bella Vista 南アンデス山脈の観測候補地

ラ・セレナ教会の側面アンデス山脈は、大気の上層を除いて、太平洋の湿気の侵入を阻む障壁を形成します。対照的に、中央アルゼンチンの平坦な平原は、大西洋の湿気に大きな障害をもたらさないです。幸運にも、南アンデス山脈の東斜面地域は大西洋から遠く離れており、水分はその方向から時折しかない丘陵地帯に到達します。

日食を見る最高のチャンスがある場所として、Bella Vistaの小さな村落は、衛星画像が軌道沿いのどこでも最も低い平均雲量です。

7月は冬の乾季の季節で、ほとんど降水量が見られません。季節と高度(San Jose de Jachalでは1200m、Bella Vistaでは1,900m)のため、夜間は涼しく、San Jose de Jachalでは凍ったり、時には-10℃以下の気温になることがあります。

気候は乾燥していますが、地形はまだ雲の曇りのグラフに見られるように雲の統計には控えめな影響を与えます。Bella Vistaの最低約28%から、雲量はSan Jose de Jachalで少し上昇し、その後、San Juanでは34%と更に上昇しています。

Bella Vistaは西側の6000mのアンデス山脈と東側の3400mのPrecordilleraを持つ南北の構造的な谷(時にIglesias Valleyと呼ばれる)にあります。谷は狭く、約40キロの幅しかありません。砂丘がなくても、カリフォルニアのデス・バレーに匹敵する気候と地理があります。それは東と西の地形によって保護されているので、特にアルゼンチンでは最も乾燥した気候になります。それがプライムワイン生産地域になり、アルゼンチンで最も日当たりの良い地域の一つです。

サンファンの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C 27.0 25.7 22.4 17.5 12.2 7.8 7.8 10.8 14.0 19.7 23.5 26.4 17.9
平均最低気温 °C 19.4 18.5 15.8 11.0 5.4 1.1 1.1 3.3 6.3 11.3 14.9 18.3 10.5
降水量 mm 18 20 12 3 2 3 7 3 7 4 9 11 99


サンファンの気候

サンファンの皆既帯最良の観測場所となるBella Vistaに近いサンファンの気候は、ケッペンの気候区分によると年平均気温が18℃未満なのでBWk(温帯砂漠気候)に属します。皆既日食が見られる7月は冬季になりますが、最高気温が8度で最低気温が1度までしか上がりません。冬の首都圏のような気候となるので、ジャケットを着るなどして寒さ対策が必要となります。

雨期は夏にあたるので、乾期である冬の7月の平均降水量は7mmしかなく、傘を持つ心配がいらない気候と言えます。

サンファンの皆既日食は午後5時40分過ぎに見られるので、地平線に渡って晴れることを期待しなければなりません。皆既時の太陽高度が11度しかない状況では地平線の雲による影響を受けやすくなります。Bella Vistaでは2分30秒ほど皆既継続時間がありますが、空港のあるサンファンでは1分しかコロナが見られません。Bella Vistaまで移動する必要があります。

RP412 Bella Vistaの観測地
Bella Vista (RP412) DATA

 30° 28´  9.5"  S       △T=69.4s
 69° 15´ 19.4"  W 
Magnitude at mid eclipse : 1.01818%
Moon/Sun size ratio      : 1.03632
total solar eclipse   : 2m 30.5s

Event     Date Time (UTC-3)    Alt    Partial
 (C1) : 2019/07/02 16:25:32.4 +23.5°   0.00%
 (C2) : 2019/07/02 17:38:13.1 +11.7° 100.00%
(MAX) : 2019/07/02 17:39:32.1 +11.5° 101.81%
 (C3) : 2019/07/02 17:40:47.5 +11.3° 100.00%
 (C4) : 2019/07/02 18:46:52.8 -00.7°   0.00%
Sunset: 2019/07/02 18:45:00.0 -00.2°   0.00%
Bella Vistaの観測地で最適な場所が、RP412でしょう。太陽が沈む西の方角で皆既日食となるので、当日は大勢の現地人が集まるに違いありません。RP412の皆既継続時間は2分30秒です。RP412とは、Bella Vistaを縦断する主要道です。市街の南端に皆既帯中心線が通過しています。

右上の写真は、皆既帯中心線が通過しているRP412から太陽の沈む西の方角に合わせてGoogle Mapをキャプチャーしたものです。当日は、山脈スレスレにコロナの光が輝くことでしょう。以下の地図に見える赤い点が観測地に選定した場所です。


Bella Vista (RP412)
Bella Vista (RP412) 出典:Xavier M.Jubier


リオ・クアルトの位置 パンパ地域の観測候補地

アンデス山脈の東方に広がる広大なパンパと呼ばれる肥沃な地域を流れるクアルト川は、コルドバ州南部を流れる河川であり、リオ・クアルト市はクアルト川流域の湿潤パンパ中央部に位置しています。この地理条件が、周辺の農業地域にとっての交通拠点となるリオ・クアルトの発展につながり、20世紀中に多くの屠畜場や食品加工工場が立地しました。

リオ・クアルトのロカ広場 1971年5月1日、市内に国立リオ・クアルト大学が設立。会議、学会、セミナー、大学院課程などで、国内および海外の提携先から様々な専門家や知識人を招いています。長年にわたって教員や研究者のための研究室や講義を持ち、教育、文化、科学、研究の分野でコルドバ州南部の広大な地域の中心地の役割を担っています。42の課程の実施を通じて、4段階の学位(学士、修士、博士、プロフェッショナル)を与えており、科学技術訓練、職業訓練、科学的研究と文化的発展に貢献しています。

Rio Cuartoに架設されたケーブル留め型橋 エストゥディアンテス・デ・リオ・クアルトとSBアテナスというサッカークラブが市内に本拠地を置いています。2006年には国際生物学オリンピックの開催地となりました。近隣には、リオ・クアルト・クラテルスという地質学的に稀な衝突クレーターの研究グループがあります。

リオ・クアルト市街の東北にリオ・クアルト空港があり、小型飛行機が毎週6便でアルゼンチン航空がブエノスアイレスへのフライトを提供しています。

リオ・クアルトの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C (°F) 29.4
(84.9)
28.6
(83.5)
26.0
(78.8)
22.8
(73)
19.4
(66.9)
15.6
(60.1)
15.3
(59.5)
18.3
(64.9)
19.9
(67.8)
24.0
(75.2)
26.6
(79.9)
28.4
(83.1)
22.9
(73.2)
日平均気温 °C (°F) 23.2
(73.8)
22.4
(72.3)
19.8
(67.6)
16.4
(61.5)
12.8
(55)
9.5
(49.1)
8.9
(48)
11.2
(52.2)
13.2
(55.8)
17.5
(63.5)
20.1
(68.2)
22.4
(72.3)
16.5
(61.7)
平均最低気温 °C (°F) 17.8
(64)
17.1
(62.8)
14.9
(58.8)
11.8
(53.2)
8.0
(46.4)
4.7
(40.5)
4.2
(39.6)
5.9
(42.6)
7.7
(45.9)
11.6
(52.9)
14.4
(57.9)
16.8
(62.2)
11.2
(52.2)
降水量 mm (inch) 140
(5.51)
88
(3.46)
119
(4.69)
51
(2.01)
24
(0.94)
9
(0.35)
19
(0.75)
13
(0.51)
48
(1.89)
71
(2.8)
132
(5.2)
132
(5.2)
846
(33.31)
平均降水日数 10 8 10 6 4 2 4 3 5 7 9 11 79
湿度 % 68 69 75 75 71 71 71 64 62 62 64 66 68.2


リオ・クアルトの気候

リオ・クアルトの皆既帯リオ・クアルトは、湿潤パンパ地域に典型的な、穏やかで四季がある気候です。夏は頻繁に雷雨があり暖かいですが、暑さはしばしば南風の時期によって短縮されます。平均最高気温は29度で過ごしやすいのですが、38度まで達することも。秋は3月に訪れ、冬は初霜と共に5月に訪れます。非常に乾燥した冬の間、気温は風のパターンによって大きく異なります。コルドバ山脈から吹き下ろされる北西風は真冬でさえも25度の気温(夜は肌寒いが)をもたらすことがあり、南風は日中の最高気温約6度という寒さをもたらします。気温はしばしば-5度まで落ちこみ、降雪は珍しくありません。

2007年には、15cm以上の降雪が町を覆い、気温は-11度に急落。最高気温は0度ですが、これは極端な例です。春には暴力的な雷雨や幅の大きな気温変化があり、霜が降りたり涼しい期間を過ぎると熱波に見舞われます。何年かに1度は冬期に恒例の雨不足が春まで続き、地域の農業にとって脅威となります。しかし、年平均降水量846mmのリオ・クアルトは概して農作物生産に好都合です。

リオ・クアルトの河川敷 Rio Cuartoの観測地
Rio Cuarto DATA

 33° 06´ 39.4"  S       △T=69.4s
 64° 20´ 37.0"  W 
Magnitude at mid eclipse : 1.00884%
Moon/Sun size ratio      : 1.03472
total solar eclipse   : 2m 00.0s

Event     Date Time (UTC-3)    Alt    Partial
 (C1) : 2019/07/02 16:30:48.0 +18.0°   0.00%
 (C2) : 2019/07/02 17:41:26.4 +06.5° 100.00%
(MAX) : 2019/07/02 17:42:26.5 +06.3° 100.08%
 (C3) : 2019/07/02 17:40:47.5 +06.1° 100.00%
 (C4) : 2019/07/02 18:45:57.0 -05.4°   0.00%
Sunset: 2019/07/02 18:19:00.0 -00.3°  34.15%
Rio Cuartoの観測地で最適な場所が、Rio Cuartoの河川敷でしょう。太陽が沈む西の方角で皆既日食となるので、当日は大勢の現地人が集まるに違いありません。リオ・クアルトの河川敷での皆既継続時間は2分00秒です。リオ・クアルトの河川敷は、市街中心部に位置するにも関わらず西に沈む太陽が良く見えます。

右上の写真は、リオ・クアルトの河川敷から太陽の沈む西の方角に合わせてGoogle Mapをキャプチャーしたものです。当日は、河川敷の対岸に並ぶ木々のスレスレでコロナの光が輝くことでしょう。以下の地図に見える赤い点が観測地に選定した場所です。

この記事を記述した2018年9月初旬の段階では、リオ・クアルト市街地のホテルにまだ空きがありました。

Rio Cuarto DATA
Rio Cuarto DATA 出典:Xavier M.Jubier


ロボス湖の皆既帯 ロボスとロボス湖の観測候補地

今回見られる皆既帯で最大の都市がブエノスアイレスです。但し、ブエノスアイレスでは皆既帯にかかっておらず、部分日食のまま日没を迎えます。それでも99%の部分日食なので、かなり迫力のある日没となります。

ロボスとロボス湖の位置 ブエノスアイレスから南西に100kmほど進むとロボス市があります。ロボス市街を斜めに向かって皆既帯の中心線が通過しています。但し、地平線スレスレの皆既日食のため太陽高度が1度しかありません。

砂漠でない限り地平線の太陽をまともに見ることはほぼ不可能です。それでもこのサイトでは、地平線スレスレで運が良ければ見られる可能性のある場所を探ります。

ロボス市街では、木々や建物の高さが太陽を遮ってしまうので地平線スレスレまで開けている観測地を探す必要があります。

ロボス市から15km南に800haの面積を誇るロボス湖があります。ロボス湖の北端にVilla Loguercioと言う街があります。人口は約400人ほど。近くには、フォルティン・ロボス鉄道駅があります。その周辺にはホステルやキャンプ場もあります。2018年9月初旬の段階では、Villa Loguercioのホテルにまだ空きがありました。

ロボス湖を背にすると目前に沈む夕陽が見られます。地平線に接するコロナが見られます。Villa Loguercioでも建物や木々に遮られます。鉄道が通っている線を見る方向は、遮るものがないので観測候補地になります。 美しいロボス湖

ロボス湖へのアクセス

ロボス湖にはブエノスアイレス州・ロボス市から15km、首都ブエノスアイレスから115kmに位置しています。 首都から来るには、ルート205に乗り、ロボス市を通過しなければなりません。ロボス湖に達するまで4km以上舗装されたルートを利用する必要があります。

ロボス湖には、幅広いキャンプ場があり、その日に行く人のためにグリルテーブルと椅子を備えた公共の遊び場があります。 すべてのキャンプ場には、ボートを下げるためのドックとランプが付いた、湖へのすべてのサービスと直接アクセスがあります。 ロボス湖の地図

ロボス湖の観測地
Lake Lobos DATA

 35° 17´ 02.0"  S       △T=69.4s
 59° 08´ 51.1"  W 
Magnitude at mid eclipse : 1.01319%
Moon/Sun size ratio      : 1.03317
total solar eclipse   : 2m 03.5s

Event     Date Time (UTC-3)    Alt    Partial
 (C1) : 2019/07/02 16:35:04.9 +12.7°   0.00%
 (C2) : 2019/07/02 17:42:24.7 +01.5° 100.00%
(MAX) : 2019/07/02 17:43:26.6 +01.3° 100.13%
 (C3) : 2019/07/02 17:44:28.2 +01.1° 100.00%
 (C4) : 2019/07/02 18:44:35.7 -10.0°   0.00%
Sunset: 2019/07/02 17:53:00.0 -00.3°  85.12%
ロボス湖の観測地ロボス湖周辺の観測地で最適な場所が、Laguna de lobosとSalvador Mariaを結ぶ道路沿いでしょう。太陽が沈む西の方角で皆既日食となるので、当日は大勢の現地人が集まるに違いありません。道路沿いでの皆既継続時間は2分03秒です。右写真はGoogle Mapからキャプチャーした写真で、写真の中央が太陽の沈む方向です。道端に車を停めざるを得ないのですが、この場所なら地平線を遮る木々がありません。但し皆既時の太陽高度はたった1度しかありませんので、個人的におススメ出来ない観測地です。

地図に見える赤い点が観測地に選定した場所です。

この記事を記述した2018年9月初旬の段階では、ロボス湖周辺のホテルにまだ空きがありました。

Lobos-DATA
Lobos DATA 出典:Xavier M.Jubier
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