ラ・セレナ皆既日食・出発編

Keietsu Sayama
(1)25年ぶりのチリ遠征

2019年7月2日の皆既日食〔サロスbP27…58/82〕は、ニュージーランドの東方沖1000kmの海上から始まり、南太平洋のピトケアン諸島を経て南米アルゼンチンのブエノスアイレスで日没となります。

1サロス前の2001.6.21は、ウルグアイ東南沖〜アフリカを横断してマダガスカルにかけて見られました。当時の紀行文はこちらです。この時は、ザンビアの首都ルサカ市街のホテル敷地内で3分16秒の皆既日食を観測出来ました。
2019年7月2日の皆既日食帯地図
2019年7月2日の皆既日食帯地図
今回は皆既帯が通過する陸地が全て南米大陸に限られます。南太平洋のピトケアン諸島にあるオエノ環礁も皆既日食が見られますが、交通アクセスが非常に悪くて行かれません。ピトケアン諸島に行くにもニュージーランドから長い船旅を強いられます。

今回の皆既日食ツアーはどこも高額で、平均して70万。一番安いツアーでも最低60万以上は必要とのことで、ツアーでの遠征は厳しいと思いました。それでも一昨年のアメリカ皆既日食の前からラ・セレナで皆既日食を見ると決めていました。

かつてNHKで1990年に銀河宇宙オデッセイが放送されていました。1990年6月30日に放送されたプロローグ大星夜では、その中心となる舞台がラ・セレナの山奥にあるラスカンパナス天文台です。
ラ・セレナの位置
ラ・セレナの位置
北半球では見られない南半球の夜空を紹介していますが、中でも南十字星の側に輝く宝石箱(NGC4755)と言う散開星団が素晴らしく綺麗で、一瞬にして星空の虜となりました。

普通であれば山奥で皆既日食を観測するのが筋でしょうが、単に街中が近くてラ・セレナ空港からもアクセスが良いと言う理由だけでラ・セレナに観測地を決めました。天文台の近くにあるホテルは2年も前から押さえられていて、既に予約が無理でした。

ラ・セレナのホテルを押さえたのが2019年の今年に入ってからすぐに予約しました。その宿はアパートメントハウスで、現地で現金払いをすればいいそうです。
NGC4755
NGC4755(宝石箱)
皆既日食前後は皆既日食料金でドコのホテルもヒトの足下を見たようなバカ高い値段を吹っ掛けるモノですが、アパートメントハウスは良心的です。7/2〜7/3だけ泊まるのに66$しか掛かりません。予約後すぐに満室となりました。実にギリギリのタイミングです。

ロケーションも良く、目の前が太平洋に面する海岸です。今回は北西の空に皆既日食が見られて、部分日食のまま水平線に太陽が沈みます。

水平線に光る太陽のコロナは、地平線の大気の影響を受けて黄金色に輝いています。水平線ギリギリに金星が輝き、反対側には水星と火星が接近している様子が見られます。

これは快晴であれば実現するロケーションですが、自然相手の天文現象なのでシミュレーション通りに行かないことが多いです。果たして今回の遠征はどうなったのか、時系列に順を追って紀行文を紹介します。

ちなみに右の画像は、スマホアプリのStar Wark2からスクリーンショットをキャプチャーしたものです。これは正確な緯度経度を合わせてもコロナが見られないので、多少緯度経度をずらしました。

水平線に光るコロナのシミュレーション
水平線に光るコロナのシミュレーション

銀河宇宙オデッセイ(1990) OP

(2)成田空港でやらかした

出発前の成田空港は二時間前に着いたにも関わらず、やたらと忙しいです。いつも携行する紫色のスーツケースは機内手荷物には出来ず、水や液体類を入れました。日食撮影で必ず使うアストロソーラーフィルターの切断に必ずハサミを持って行きますが、これが仇となり出発時間に遅れそうになりました。
成田空港出発ゲート
成田空港出発ゲート
紫色のスーツケースにはリュックサックに入れていたハサミを入れたのですが、もう1つ予備のハサミをリュックサックに入れていたのをすっかり忘れてしまい、リュックサックの全てを見られた挙げ句、出てきたハサミはスーツケースとは別の箱に入れられてダラス空港まで送られるそうです。

2年ぶりに飛行機に乗ると手荷物に入れるモノと入れないモノの区別が付かなくなります。今回はその教訓として、敢えて紀行文に書きました。同じ失敗をしないように皆様は気を付けてください。
成田空港出発案内板
成田空港出発案内板
最初のフライトはダラス空港。機内では、約12時間拘束されます。アメリカン航空のコードシェア便なので、てっきりアメリカン航空に乗るモノだと思ったら天下の日本航空 JALでした。

田舎の青森県弘前市に帰省するには弘南バスの昼行便に乗るので、飛行機で帰省は平成の間はしたことがなかったです。元々東亜国内航空の時代から利用していたので、昭和末期の学生時代に住んでいた札幌から青森空港には東亜国内航空を使って帰省していました。
東亜国内航空
東亜国内航空
時代は流れ、日本エアシステムがJALに吸収合併されて青森空港にはJALしか飛ばなくなりました。かつてはANAも飛んでいたのですが、JALの寡占市場です。

そのJALに30年以上も御無沙汰していたので、すっかり進化していて驚きの連続でした。携帯のUSB差し込み口があれば、目の前のイスから給電が可能です。何より驚いたのが、窓ガラスがスモークで一瞬にして黒くなることです。 浦島太郎を地で行きました。
JALのロゴマーク
JALのロゴマーク
時代は確実に未来へ進化していました。そういえば成田空港の出発でも顔認証だけで済むので、パスポートを使用する本人であれば出国スタンプは省略されてすんなり通れます。でも昭和中盤生まれでアナログ人間の私は出国スタンプが欲しいので、パスポートに押印してもらいました。

出発は2019年6月28日(金)の10時45分、離陸したのが11時15分です。滑走路でかなり待たされました。ちょうど太平洋沿岸に台風3号が発生して千葉沖を通過中です。離陸後も厚い雲ばかりで、ロクに地上の風景が撮れなかったです。
6/28 朝9時の気象衛星写真 weather news抜粋
6/28 朝9時の気象衛星写真 weather news抜粋

成田空港出発南口
成田空港出発南口

(3)Nikon COOLPIX P1000を購入

ラ・セレナ遠征に持参した機材は、Nikon COOLPIX P1000を購入しました。昨年の秋に発売されていたのですが、発売価格が10万円台と高く、とても手が出るシロモノではなかったです。

それでも楽天市場のセールで税込95000円で売られていたので、買い時を逃さないように思いきって買いました。ラ・セレナ遠征出発の2週間前のことです。セール終了後に同じ店の価格を見たのですが、115,500円と2万円も値段が跳ね上がっていました。買い時を逃さなくて良かったです。翌月の支払いはリボ払いになりました。
Nikon COOLPIX P1000
Nikon COOLPIX P1000
それからは鬼のように忙しくなり、晴れた日はシゴトがあり、休みの日は雨か曇りでCOOLPIX P1000の撮影テストもロクに出来ないまま、本番を迎えてしまいました。

1度だけ月をテスト撮影出来たのですが、地平線を昇ったばかりの月は明るくて赤かったです。24mm〜3000mmの画角をカバー出来るのでデジタルズーム領域では月のクレーターまでハッキリと見られました。凄い化け物カメラです。

赤道儀を付けず軽い三脚に付けただけのカメラで撮ったので、日周運動ですぐに画角から外れます。カメラは動かさず、日周運動を記録した方がよっぽど価値ある動画になります。

南米のフライトはロストバゲージが怖いので、機材はなるべくリュックサックに入れました。頑丈な三脚はリュックサックや小さな赤いスーツケースには入らないので預け入れ荷物となりました。

そもそも長年MINOLTA→SONYのαシリーズを使ってきて、なぜNikonブランドを選んだのか・・・

Nikon COOLPIX P1000はズーム機能が秀逸で、24mm〜3000mmの画角をカバーします。つまりこれ一本あれば、全ての願いが叶ってしまうのです。またレンズはカメラに内臓されたままなので、レンズ交換の手間が省けます。 デジタルカメラなので、一昨年の失敗の原因ともなったカメラの裏側のカバーがありません。シャッター羽根に間違って触らなくても良い構造となりました。
Nikon COOLPIX P1000
Nikon COOLPIX P1000 レンズ望遠状態
Nikon COOLPIX P1000はカメラ本体だけで、旅先で持ち歩くにはケースが必要です。そこでNikon CS-NH59 BK ソフトケース COOLPIX P1000用も新たに購入しました。

この中にはカメラ本体の他に忘れやすい充電池の予備とUSBケーブルの充電器と別売のCOOLPIX P1000用リモコンとCOOLPIX P1000の取扱説明書を入れておきました。

結局Nikon COOLPIX P1000の別売品も併せて10万円は超えたのですが、この一式があれば旅先でも困らないです。欲を言えばソフトケースの出し入れがジッパーになっていれば完全な袋となって小物の落下に役立つのですが、あまり贅沢も言えません。
Nikon CS-NH59 BK ソフトケース COOLPIX P1000用
Nikon CS-NH59 BK ソフトケース COOLPIX P1000用
撮影機材のCOOLPIXには優れもののフィルターを着けています。一昨年の米国皆既日食で用意したケンコーマルチホルダーG100、2週間前に買ったケンコーマルチホルダーG100用アダプターリング77mm径、ケンコーPRO ND100000です。

77mm径のリングは、Nikon COOLPIX P1000の口径にあっているので買いました。これをNikon COOLPIX P1000のレンズ先端にねじ込み、ケンコーマルチホルダーG100を77mm径のリングを土台にして装着します。

更にケンコーマルチホルダーG100の溝にケンコーPRO ND100000フィルターの角型を差し込みます。G100の溝は2つありますが、カメラ側の溝を使うと光のモレが無くなります。迷光防止です。これを上げ下げ出来たらフィルターセットの完成です。
kenko アダプターリング77mm径
kenko アダプターリング77mm径
ND 100000フィルターは100mm×100mm仕様を使いますが、既に生産終了品です。今回どうしても使いたいので検索したところ、ヨドバシカメラ新宿西口カメラ館しか在庫がないので、当務明けに連絡して翌朝の休日に買いに行きました。連絡後、売り切れとヨドバシのサイトに書かれていました。

kenko PRO ND100000フィルター(角型)は17,430円で買えました。希望小売価格は税抜で33,000円です。今回はフィルター類も全て買いそろえたので、奇跡の撮影が出来ました。
kenko PRO ND100000フィルター(角型)
kenko PRO ND100000フィルター(角型)

JAL機内のフライト案内で皆既帯が通過する地図を撮影
JAL機内のフライト案内で皆既帯が通過する地図を撮影

(4)ダラス行きの機内で

成田空港から丸一日をかけてダラス・フォートワース空港に向かいます。一昨年も米国に上陸したのですが、シアトル空港だったのでそれほど長時間にはならなかったです。

今回は日本時間の11時15分に離陸してダラス・フォートワース空港には朝の8時40分に着きます。夜を飛び越えて着いたら朝なので、早速時差ボケの洗礼を受けることになります。
JALスカイタイムとアップルジュース
JALスカイタイムとアップルジュース
離陸してから3時間ほど経って腹が減ってきたころに機内食と飲み物が運ばれました。最初は飲み物です。

相方が好んで頼むと言うJALが機内専用に開発したキウイ味のジュース・スカイタイムを頼みました。非常に口当たりが良くて飲みやすいドリンクです。アップルジュースも頼んだので、スカイタイムの隣に置きました。同じような味ですが、キウイ味と言うのが新鮮です。また頼みたくなりました。

このキウイ味は“初代スカイタイム“として1992年から2004年まで提供されていましたが、2004年以降は沖縄のシークワーサー味になっていました。その後、多くの要望があって2014年から10年ぶりに復活することとなったそうです。

スカイタイムは、基本的にJALの機内で飲むことができます。それ以外に飲みたい場合は、通販サイトでの注文となります。

1Lの紙パックに入っているものを購入することができます。ただしセット購入となるため、少しだけ欲しいという方には向いていません。1Lの紙パック6つ入りが2,525円で販売されています。

JALショッピングというオンラインショッピングサイトでは、ペットボトルで購入できます。24本または48本単位(1本280mL)での販売となるので、数本だけ欲しいという場合は向いていません。
キウイ味のジュース・スカイタイム 1Lの紙パック
キウイ味のスカイタイム 1Lの紙パック
次に運ばれたのは、JALの機内食“彩り野菜のドライカレー”です。JALは4年前から機内食の開発を若手料理人に監修させています。今回は、2019年6月〜2019年8月に提供されるRED U-35〜若き料理人たちによる機内食〜 2019 夏メニューです。

GOLD EGG 2017-準グランプリ-を得たフランス料理が専門で「シエル エ ソル」の音羽 創さんが“彩り野菜のドライカレー”を監修しました。非常に美味かったです。白ワインも頼みました。
JALの機内食“彩り野菜のドライカレー”
JALの機内食“彩り野菜のドライカレー”
日本周辺から海上はずっと天気が悪くて雲ばかりでしたが、この時期に乾燥するアメリカ大陸上空を飛んでいる時は地上の風景が機上から良く見えました。

飛行機の翼の後ろ側の席だったので、日本航空の翼が映っていました。テキサス州上空では、機上からでも水を灌漑して同心円状に畑を作るセンターピボットの地形が見えています。

もうすぐダラス・フォートワース空港に到着します。とりあえずエコノミークラスで狭い機内からは解放されます。
テキサス州上空を飛行するJAL
テキサス州上空を飛行するJAL
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