北半球の本影錐の移動

1997年7月号 天文ガイド 入選作品

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日時(日本と同じ時差)1997/3/9 10:2:30→10:3:0→10:3:30
撮影地シベリア シルカ市ソンツェバーヤ地区
緯度・経度北緯51゜5’N 東経115゜4’
露 出 筒先開閉法 1/2秒→1/2秒→1/500秒
機 材 MINOLTA α-8700i
レンズAF 24mm F3.5 開放
フィルムAGFACOLOR XRG100

写真説明
こちらは、1997年3月9日にシベリア鉄道沿いのシルカ市郊外ソンツェバーヤで撮影した荒涼たる大地に浮かぶ月の影が移動する様子です。

皆既日食は観測できる幅が非常に狭く、太陽と新月と地球が一直線に交わり、月の影が太陽を部分的に隠すことを部分日食と言います。この場合はシベリアで見られた皆既日食に伴う部分日食が日本でも観測されました。ここシベリアでは月の影が完全に太陽を隠したので皆既日食が起こりました。この三枚の写真は、大地に映った月の影の移動する様子が良く分かります。この月の影のことを天文用語で本影錐(ほんえいすい)と呼んでいます。今回は太陽高度が20度と低いために観測できました。太陽高度が高い場合も観測できますが、淡い現象なので寝ながら上を見るしか確認する方法がありません。

実際に体験すると太陽の光が月によって失われてダイヤモンドリングを迎える瞬間、黒くて大きな影が太陽方向に迫ってきます。皆既中はその影の中に大地が覆われるので、地平線付近からわずかに影から外れた太陽の光が全周に渡って夕焼けの状態で見られます。それも長くは続かず、猛スピードで月の影は地表を駆け抜けて行きます。地球の直径を約3時間かけて通過するので、どんな交通機関も月の移動するスピードにはかないません。

やがて次のダイヤモンドリングを迎える直前に月影の移動を撮り始め、三枚目でダイヤモンドリングを撮ったと同時に月の影も地表から去ります。写真から皆既中とダイヤモンドリング直後とでは、地表の明るさの違いもお分かりいただけます。

ここは見るからに寒そうな風景ですが、観測地は-20℃で皆既中は-30℃まで気温が下がりました。徐々に太陽の光が失われるのと同時に地表に届く熱も奪われて気温が低下します。撮影中は失敗したくないので、素手でシャッターボタンを押していました。

黒い太陽の右下に見えるのが水星で、更に右には金星が見られます。この写真は広角レンズで撮ったのですが、もっと画角が広ければ上部にヘール・ボップ彗星が見えていました。ですが同時に撮るのはコロナの露出がオーバーになるほどシャッタースピードを伸ばさないと撮れません。せっかくの現象を15秒間も見えないファインダーで隠されたくなかったので、止む無く通常の1秒露出で撮影しました。

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