コロナ禍の南米皆既日食

Keietsu Sayama
(1)コロナ禍の皆既日食概要

2020年12月14日の皆既日食帯地図〔サロスbP42…23/72〕は、世界協定時(UTC)13時30分頃に太平洋の中央から始まり、南米パタゴニアを経て大西洋東部で日没となります。

1サロス前の2002.12.4は、大西洋からインド洋を通過、オーストラリアで日没皆既となりました。

コロナウィルスの感染拡大が収まる気配が無く、各ツアー会社もチリ・アルゼンチン皆既日食ツアーの催行を軒並み中止した模様。

2020年12月14日の皆既日食帯地図
2020年12月14日の皆既日食帯地図
個人で遠征も考えたのですが帰国後2週間は隔離されることを考えると、遠征に行かない方が良いと言う結論になります。2週間休むと欠勤になるので、サラリーマンにはリスクが高過ぎます。

またチリ・アルゼンチンは未だに入国規制がかかっていて、コロナ禍のリスクさえ無ければビエドマ空港の敷地内で観測予定でしたが、それも無理な状況です。全くコロナ禍で、遠征者泣かせです。

右の画像は、ISSから撮影された南米の素晴らしい衛星写真です。昨年もこの地を踏んだので、今年も・・・と思っていました。

ISSから撮影された南米の素晴らしい景色
ISSから撮影された南米の素晴らしい景色

2020年12月14日の皆既日食帯雲量予報地図
2020年12月14日の皆既日食帯雲量予報地図:数値が低いほど晴天の確率が高い

(2)観測予定地だったビエドマ空港

2020年12月14日の皆既日食帯雲量予報地図を見ていただければ分かるのですが、大西洋方面は晴れて皆既日食の見られる確率が高くなります。コロナ禍前から、遠征に行くならアルゼンチンのビエドマにしていました。

皆既帯に大都市が無く、唯一ビエドマ空港が皆既帯の中に入っています。そこから南へ行くほど皆既日食継続時間も長くなります。
ビエドマ空港
ビエドマ空港
天頂に近いところで起こる日食なので、地平線に木々があっても気になりません。ビエドマ空港前の敷地も広く、観測候補地でした。

スカイスキャナーで検索したところ、12/11出発で最安値は往復250000円と言う価格もあったくらいです。しかし既にコロナ禍で渡航制限も掛けられていては、行くに行けません。それでも航空券が売られていたのですから、命知らずの方々が航空券を購入したとしか思えないです。

ビエドマ市街は皆既帯に入らず、99%の部分日食しか見られません。たまたまビエドマ空港がビエドマ市街の南部に位置しているので、ここで皆既日食観測が可能なのです。皆既日食継続時間は50秒ほど。晴れる確率が高い観測地なので、コロナ禍でなければ確実に行っていました。以下の地図で、赤い点が観測候補地です。
ビエドマ空港前の敷地
ビエドマ空港前の敷地

ビエドマ空港前の敷地観測DATA
ビエドマ空港前の敷地観測DATA(Maps provided by Xavier Jubier

(3)ビエドマ市街の熱狂

こうなると観光客もいない中、元々ビエドマ市街に住んでいる方々の土壇場です。この方々の写真とYouTubeにupされる投稿を待つしかありません。

ネットサーフィンをしていてビエドマ市街の風景を見ると、ネグロ川沿いにある皆既日食観測告知が目につきます。ここでは99%の部分日食しか見られないので、南方へ移動しての観測となります。

たまたま夜に撮られた写真を見つけたので、皆既日食の瞬間はこのような光景が見られることでしょう。

写真ではネグロ川沿いかどうかが分かりませんが、昼に撮られた写真では壁の奥に川が映っていたのでネグロ川沿いと断定できます。
ビエドマのネグロ川沿いにある皆既日食観測告知
ビエドマのネグロ川沿いにある皆既日食観測告知
ビエドマ皆既日食の想像写真を見るにつけ、つくづくコロナ禍が恨めしいです。皆既日食の起こる12月14日は、気になってシゴトにならないので有給を取って休みます。YouTubeで南米皆既日食中継とかがあればいいのですが…

昨年行ってきたチリのラ・セレナでは、現地に着くまで皆既日食記念切手があるのを知らなかったです。チリの郵便局が記念切手を告知していない方針のようで、記念切手の告知ポスターすら無かったので口頭で確認するしかなかったのです。
ビエドマのオブジェ
ビエドマのオブジェ

ビエドマ皆既日食の想像写真
ビエドマ皆既日食の想像写真

(4)ビエドマの概要

ビエドマ(Viedma)は、アルゼンチンの都市。人口47246人(2001年)。リオネグロ州の州都です。ネグロ川の南岸に位置し、大西洋からは川を30kmさかのぼった地点にあります。首都ブエノスアイレスからは国道3号線で960km離れています。

ビエドマは川の北岸にあるブエノスアイレス州のカルメン・デ・パタゴネス(Carmen de Patagones)と双子都市をなしています。
ビエドマ(写真上部) とカルメン・デ・パタゴネスの双子都市
ビエドマとカルメン・デ・パタゴネスの双子都市
ビエドマはパタゴニアで最も古い都市のひとつで、1779年4月22日に建設されました。

もともとカルメン・デ・パタゴネスとビエドマとはひとつの都市で、カルメン・デ・パタゴネスと呼ばれていました。最初にFrancisco de Biedma y Narvaezによって砦が作られたのは川の南岸で現在のビエドマですが、数年後に破壊され、再建された砦は川の北側、現在のカルメン・デ・パタゴネスに移設されました。

この砦は長期間存在し、現在でも塔が残っているほど。この砦を中心に町は発展し、やがて川を越えて現在のビエドマまで街が拡大しました。しばらくして、川を境に街は分割されました。

フリオ・アルヘンティーノ・ロカ大統領の時代、1870年代の「砂漠の征服」によってアルゼンチンの領土はパタゴニアに大きく拡大し、この街はアルゼンチン領パタゴニアの首都となりました。やがてパタゴニアは分割され、リオネグロ地区が成立。初代知事だったアルバロ・バロスは、1879年にこの街の名をビエドマへと改名しました。
Argentina Eclipse 2020
Argentina Eclipse 2020
ビエドマを中心とするネグロ川下流域の経済は牧畜が中心で、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)やタマネギ、トウモロコシなどが栽培されています。ビエドマの最大の産業は州都で、行政都市としての経済活動が最も大きな割合を占めています。

市内中心部から南へ6km離れた所にはGobernador Castello空港があり、ブエノスアイレスやバリローチェ、ネウケン、プエルト・マドリン、トレリュー、コモドロリバダビア、マルデルプラタなどの国内各都市にフライトがあります。

空港の年間利用者は30000人ほど。街から30km下流には大西洋があり、エルコンドル・ビーチリゾートがあって多くの観光客が訪れます。 この街はステップ気候になります。
エルコンドル・ビーチリゾートにある皆既日食告知看板
エルコンドル・ビーチにある皆既日食告知看板
ビエドマの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C (°F) 30.3
(86.5)
28
(82)
24.3
(75.7)
20
(68)
16.4
(61.5)
12.2
(54)
11
(52)
13.7
(56.7)
17.8
(64)
20.2
(68.4)
24.5
(76.1)
28.4
(83.1)
20.7
(69.3)
日平均気温 °C (°F) 22.9
(73.2)
21.4
(70.5)
17.7
(63.9)
13.4
(56.1)
10.5
(50.9)
7
(45)
6.5
(43.7)
8.8
(47.8)
11.7
(53.1)
14.1
(57.4)
17.9
(64.2)
21.3
(70.3)
14.5
(58.1)
平均最低気温 °C (°F) 15.5
(59.9)
14.8
(58.6)
11.2
(52.2)
6.8
(44.2)
3.7
(38.7)
1.8
(35.2)
2.2
(36)
4
(39)
5.7
(42.3)
8
(46)
11.3
(52.3)
14.2
(57.6)
8.2
(46.8)
降水量 mm (inch) 45
(1.77)
42
(1.65)
57
(2.24)
44
(1.73)
31
(1.22)
23
(0.91)
24
(0.94)
20
(0.79)
27
(1.06)
32
(1.26)
20
(0.79)
18
(0.71)
383
(15.08)

Eclipse solar total en Argentina - 14 diciembre de 2020
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