悩みに悩んだ2012年5月21日金環日食 1

小山田博之
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○はじめに

2012年5月20日(日)夕方の天気予報は、「明日の金環日食、見られるのは長野県南部や北関東のみでしょう。その他の地域でも雲を通して見えたり、雲の切れ間から見えたりする可能性もあります。」 その他の気象サイトを見ても、21日朝の予報は北関東(山間部)が有利という状況だった。 北関東の場合、北限界線が近いのでリングとなる時間が短くなってしまうが、とにかく絶対に見たい!という気持ちが移動観測に駆り立てた。 いくつか候補となる所は挙げたが、具体的な場所は、予報分布図などを細かく見て決めようと思った。
日本付近の日食の見え方
2012年5月21日 日本付近の日食の見え方
○約900年ぶりの大規模な日食

今回の金環日食、国内で見られるものは1987年9月23日以来、25年ぶりのものだった。しかし、このときは沖縄本島とその周辺のみしか見られなかった。 当時、私は高校2年生。中学校時代、両親から本格的な天文活動は高校に行ってからやりなさいと言われて、勉強に打ち込んで目標としていた高校に合格した。 そのような状態で迎えた高校生活だったので、沖縄に是非とも遠征したかった。 しかしいざ入学したら、今度は大学に向けての勉強優先で遠征はまかりならぬということで、空しく部分日食を観望・撮影した。

今回の金環日食帯は九州南部、四国、紀伊半島南部、東海地方〜関東地方を通るなど、25年前とは桁違いに陸地を通過するものだった。 首都圏を通過する金環日食は1839年(江戸時代、数年後「天保の改革」着手)以来173年ぶり、 日本の広範囲で見られる金環日食としては1080年(平安時代、後三年の役の頃)以来、約900年ぶりだった。 金環日食が見られない地域でも、殆どの地域で80%を越える部分日食が見られるなど、近年にない大規模な日食と連日のように報道された。
1987年9月23日沖縄金環日食記事
1987年9月23日沖縄金環日食記事
この日食を多くの人びとが感動的に、かつ安全に楽しむためには適切な情報発信がきわめて重要であるとの認識のもと、 2011年4月22日に国内天文関係の合同組織「日本天文協議会」のワーキンググループの一つという位置付けで「2012年金環日食日本日食委員会」が発足した。

この委員会ではシンポジウムやマスコミなどへの広報を通じて、日食情報の連絡や安全な見方についての周知啓発活動が実施された。 ちなみにシンポジウムは去年から今年にかけて計3回開催された。

日食関連書籍
日食関連書籍
今年の4月に入ると、本屋やカメラ屋には日食グラスや日食グラスの入った関連書籍が特設コーナーとして設けられるようになってきた。

また某Sビールでは記念のTシャツやフライト、ファミレスでも日食グラスが発売されるなど、明らかに沖縄金環日食以上の盛り上がりを見せるようになってきた。

ファミレスの日食グラス
ファミレスの日食グラス
某ビールのパック
某ビールのパック

○どこに行くのか?

金環日食のリングは、日食中心線に近いほど継続時間が長く見られる。私がめぼしをつけたのは、中心線に近い茨城県の霞ヶ浦周辺である。 撮影予定もsky90による直焦点撮影とカメラレンズによる直焦点撮影である。 これ以外に、木漏れ日の撮影も考えていた。これに備えて、年始から連続撮影の練習を行った。

今年3月から気象業務法の予報業務許可の基準が改正されて、民間の気象会社が独自に10日先までの天気予報を一般向けに発表できるようになり、 11日(金)から当日の予報が発表され始めたのは正直嬉しかった。

しかし、この日発表された予報は芳しくないものだった。まだ、時間があるので、様子を見ることにした。

14日(月)、金環日食まで一週間。天気が下り坂に向かいやすいタイミングではあるものの、その前に、高気圧がなんとか踏ん張って、上空の薄い雲を通して見えるだろうというものだった。
5/11と5/14の予報
5/11と5/14の予報
19日(土)、昼ごろ発表された予報が悪い方向に傾いてしまった。予想された気圧の谷、中国からの上層データが入るにつれて予想よりも顕著になって、濃い雲が発生、金環日食帯を覆ってしまうということである。

このころからマスコミでも連日のように金環日食の見え方や観望にあたっての注意事項を取り上げるようになった。 ちなみにこの日は、この天気が金環日食当日だったら良かったのに!とアナウンサーが言うほど上天気だった。

本屋やカメラ屋での日食の特設コーナーにある日食グラスの売り切れが続出した。天気予報は芳しくなかったものの、2009年7月の皆既日食以上に盛り上がった。
金環日食
金環日食
20日(日)、いよいよ日食前日。この日になると日食中に晴れそうな地域がマスコミでも具体的に報道され始めた。 気象関連のサイトで発表される天気予報(天気分布)がコロコロ変わるために、自宅前の公園での観測も考えたが、移動観測を行うことに決めて、一眠りした後の夕方から機材を車に徐々に積み込んでいった。

モータードライブの電池も日食当日がゴミ捨ての日だったので、すべて交換した。夕方になると予報が再度更新された。各関係機関の予報を勘案すると、安全そうなのは長野県南部や北関東のみだった。
20日15時発表のGPV
20日15時発表のGPV
自宅から移動可能なのは北関東のみ。しかしここでは限界線に近く、継続時間は短い。その分、ベイリービーズは長く見られる・・・。 そこで機材は、ベイリービーズを拡大撮影することにして、連続撮影はやめることした。居ながらにして金環日食が見られる稀な状況だったので、機材は可能な限り、持っていくことにした。 結局、赤道儀2台、鏡筒2台持参することにした。また木漏れ日撮影用として、相方が以前購入したビデオカメラを持っていくことにした。観測風景の撮影用として、コンパクトタイプのデジカメを用意したのは言うまでもなかった。  相方も夕方から準備を始めた。具体的には夜食用のガスコンロ、水、食料などであった。このほか、ピンホールカメラの代わりとして穴じゃくしを持っていくことにした。 21日3時発表のGPV
21日3時発表のGPV
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