悩みに悩んだ2012年5月21日金環日食 2

小山田博之
○那須高原へ
ウェザーマップが19時に発表した予報では、天気の状況が良さそうな場所が群馬・栃木の山間部ということで、候補はいくつかに絞られた。 具体的には群馬県の片品村、栃木県の日光、那須高原である。結局、各種のサイト及び、気象予報士の資格を持つ友人のS氏からのアドバイスで、一番土地勘があった那須高原峠の茶屋に向かうことにした。 当初予定していた霞ヶ浦の場合は、見晴らしが良いと雑誌で紹介されていたために、同業者が集中すると思い、夕食後すぐに移動することにした。 那須の場合は土地勘があることから、少し遅らせることにした。でもあまりにも遅いとベストの場所が押さえられてしまうこと、早く着いても現地で寝ればよいと考え、22時〜23時ごろに出発することにした。
結局、色々準備に手間取って、23時過ぎに出発した。
ウェザーマップが19時に発表した予報
ウェザーマップが19時に発表した予報

東北自動車道の大谷PAや那須ICを出た直後のコンビニなどで休み休み移動しながら、湯本の温泉街に到着したのは日食当日の1時30分ごろだった。朝食を調達しようと再度コンビニに立ち寄った。 早速硫黄のにおいがして、温泉街に来たことを実感した。

しばらくすると女性2人が来て店員に「日食グラスは置いていませんか?」と尋ねていた。これを見て、相方と店を出てから、ちょっと遅いんじゃない?と話した。 ちなみに私たちは2009年の皆既日食時に購入した日食グラスを持ってきた。
カメラ屋前グッツ販売所
一ヶ月前のカメラ屋前グッツ販売所

このころから道路の周囲には咲きそろったツツジが広がり始めた。さすがに栃木県の県花「やしおつつじ」だけあってきれいだった。 それも標高を増すにつれてつぼみになっていき、気温の低下を実感した。

ふとフロントガラスを見るといくつも星が見え始めた。助手席で寝ていた相方がびっくりするほどの歓声をあげたのは言うまでもなかった。 2時ごろ、車で行けるところで、標高が一番高い「峠の茶屋(1462m)」に無事到着。
いくつもの星
いくつもの星

峠の茶屋
峠の茶屋

○日食を待つ・・・

袋小路になっている峠の茶屋付近を走ってみた。すると同業者と思しき人が数人いた。 木漏れ日ができそうな樹木のチェックも兼ねていたが、葉っぱがすっかり落ちた木ばかりで、残念ながらそのような木はなかった。

もう一度駐車場に戻って赤道儀をセットした。雲で北極星が見えないことを考えて、偏角図や方位磁針を持参したが、北極星が見えていたので、使用することなく、あっさりと極軸を合わせる事ができた。
観測風景
観測風景
そして、GPDにモータードライブのコントロールをつなげようと思ったところで問題発生!コントローラーが見当たらない、電池を換えるときに忘れてしまったのか! やむを得ずsky90は視野が広いので、撮影するたびに太陽を中心に入れることで対処するしかないと思った。 GPの方は全部そろっていたので、問題なくセッティングが完了した。

その後は特にすることもなかったこと、及び体力を温存するために車の中で寝ることにした。しかし赤道儀が置き引きされないかと心配になって、眠りが浅くなってしまった。それでも目をつぶって休むことにした。

観測機材
観測機材
次第に周囲が白み始めた。その間も日食を見に来たと思われる人が次々と上がってきた。でも中には熊避けの鈴を持った登山者の団体のケースもあった。 相方は相変わらず寝ていたが、私は空腹だったこともあり、起き出して周囲を散策し始めた。来たときよりも日食観望と思われる人は増えて、セットされている三脚の数も増えていった。 望遠鏡を何台もセットしていた人がいて近づいてみると、高校の後輩で友人のS氏だった。 簡単な挨拶と情報提供のお礼を言って、自分の車に戻った。

5時ごろになると相方も起き出して、体が冷えたので持参したコンロでお湯を沸かしてコーヒーや紅茶を飲んだ。折角なので、S氏の分もコーヒーを作って、相方と持参・挨拶をした。 その後はコンビニで朝食用に購入したパンを食べて、ラジオを聴きながら太陽が欠ける時刻を待つことにした。 この間にも上ってくる人がいて、エンジン音がうるさい車が来て場違いの連中が来たかと思ったら、しっかりと日食グラスを持っていた(これとは別に本当の走り屋も来ていましたが、すぐに居なくなりました)。 空はところどころに厚い雲があるものの、薄い雲が全天に広がる天気だった。

金環日食直後の空
金環日食直後の空
○トラブル続出の前半戦

持参してきたPCのエクリプスナビゲーターを起動。相方の携帯で位置情報を把握、入力した上で、欠け始めのカウントダウンを表示させた。 PCの時計、カメラの時計、携帯電話の時計などは、時報で合わせたので問題はないと思った。太陽は欠け始めたが、そのころから雲がかかり始めた。 日食グラスを見てもどこが欠けているのか分からなかった。太陽が雲から抜けて、ようやく欠け始めた様子を確認することができた。
雲を通して見えた太陽
雲を通して見えた太陽
その頃、おじさん2人が私たちの隣に来た。日食を見に来ていたらしいが、カメラのみで日食グラスは持参していないみたいだった。 見かねた私たちは日食グラスを渡すと、早速太陽に向けて欠けている!と驚いていた。

sky90のほうは、10分おきに撮影を続けていった。一方、V社の6cm屈折は欠け際の拡大(ベイリービーズ)撮影を行おうと準備を進めていった。 sky90の方には50Dを装着した。こちらの方は、液晶表示で簡単にピント合わせを行うことができた。 一方、V社の6cm屈折には20Daをつけたが、液晶に表示させても極端に明るくなってしまい、ピントあわせにてこずった。
日食グラス
日食グラス
フィルターをはずして遠くの景色で合わせようと思ったが、今度は暗くなってしまい、なかなかピントを合わせることができなかった。 最後はモータードライブの不調で追尾がままならなくなり、拡大撮影は諦めざるを得なかった。

PCもトラブルが発生した。バッテリーがなくなってしまったのである。 しかし相方からシュガーレットから電気を取り出すケーブルを持っているのでは?と指摘された。 新しいPCなのでつながるかどうか不安だったが、無事充電を開始。再起動を行って、エクリプスナビゲーターを立ち上げた。 半分以上欠けていたところで、周囲には変化が生じ始めた。日射量は明らかに低下していき、サングラスをかけたような状態になりつつあった。 吹く風も少し涼しくなってきた感じがした。このようなことは写真では分からない、その場に居合わせたものにしか体験できないことである。

欠け方が大きくなってきたので、相方は台所から持参してきた穴じゃくしで欠けた太陽が見えるかどうか試してみた。 周囲はアスファルトで地面は黒く見づらいので、望遠鏡が入っていた箱に投影することにした。 すると結構、はっきりと欠けた太陽が分かった。隣にいたおじさん2人に教えたところ、夢中で写真を撮っていた。 その後、木漏れ日がある場所を探し始めた。実は、夜明け前の散策で茶屋に近いところの遊歩道に目星をつけていた。しかし遠いので別な場所、具体的には自分の目の届く範囲がベストであった。 するとトイレの裏の壁に木の影があり、程よく光が漏れていた。迷わずここの木漏れ日を撮影することにした。三脚を広げた上で、相方に頼んでビデオカメラのセットをお願いした。

金環日食10分前、これまで10分ごとに行っていた撮影を、書き込み速度を考えて、5秒ごとの3段階露光に切り替えた。 このころ、カメラが1台空いたこと、及び雲も少なくなってきたので、連続撮影を行おうと思った。 V社の望遠鏡をはずした後に雲台を取り付けて撮影を開始したが、インターバルタイマーがうまくいかないなど、トラブルが発生した。撮影がうまく行き始めたのは、リングになる直前だった。 私がバタバタする傍らで、つけていたラジオでは盛んに金環日食の中継を行っていた。
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