悩みに悩んだ2012年5月21日金環日食 3

小山田博之
○短いリング!!
太陽の飲み込まれるような月、日食グラスで見ると視力検査では「斜め右下」と読み上げたくなるような形状になりつつあった。 PCのエクリプスナビゲーターではリングになる時刻になったが、望遠鏡などで見てもリングにならない・・・・。 焦るがどうにもならない。それでも月は太陽に入り込んでやっとリングが完成した!!私にとっては、2006年9月の南米以来、約6年ぶりのリングとなった太陽であった。 限界線に近く、南側は本当に細くつながっていた。相方が穴じゃくしを用意して影を確かめるが、うまくいかなったので私が持つことにした。望遠鏡の箱にリング状の太陽がいくつも並んだ。 おじさん2人もこの投影された太陽を夢中になって撮影していた。 おたまピンホール
おたまピンホール
それが済んだので、ライブビューで太陽を眺めた。しばらくするとリングが途切れ始めた。 事前では1分40秒程度の金環日食だったが、明らかにそれより短く感じた(後で画像をチェックしたところ、30秒〜40秒程度だった)。 事前の予想では金星が太陽の左斜め下に位置していたが、それを確認することはできなかった。 裸眼でリングになっているか確かめたかったが、やはり太陽光線はまぶしく、それを確認することはできなかった。
これだったら昔の人は、金環日食の場合、ほとんど気がつかなく、皆既日食と比較しても記録が少ないということを納得した。ちなみに、日食の途中まで周囲に響いていた鳥の鳴き声が、気がつくと静かになっていた。 なお金環日食になるころ、PCで表示させていたエクリプスナビゲーターが珍しい?のか、おじさん2人含めて、それ以外の現物に来ていた人たちも夢中になって、その画面を撮影していた(笑)。
ハイライト
ハイライト

○落ち着いた後半戦
短かったリング状態も終わって、月は次第に太陽から離れ始めた。日食グラスでは視力検査の「下」のような感じに見えた。 金環日食中は見に行けなかったトイレの裏の木漏れ日をチェックしたところ、見事な木漏れ日があった。 夢中で撮影して、相方も呼んで眺めた。

太陽が次第に元の姿に戻るにつれて、日差しが再び強くなっていき、明るさもごく普通になってきた。中途半端に行った連続撮影はここで終了したが、構図がずれているなど散々な結果であった。 結果論であるが、ここまで晴れるなら当初の予定通り、連続撮影をすべきだったと後悔した。
木漏れ日
木漏れ日
太陽が半分以上戻ってくると撤収を始める人もいた。
撤収と言っても本格的に望遠鏡をセットしていたのは、私やS氏を含めて4人程度で、他の人はカメラと三脚のみという人がほとんどであった。 私も撤収をしつつ、相方と日食グラスで復円しつつある太陽を眺めた。 このころおじさん2人は、丁寧にお礼を言って帰って行った。

9時を過ぎると太陽の欠けた部分は小さくなっていった。この次に日食を見ることができるのは2016年3月9日のインドネシア方面で見られる皆既日食に関係する部分日食。 当面は欠けた太陽を見ることはできないので、食い入るように眺めた。この金環日食を起こしているサロスは18年後、北海道で再び金環日食を見せる。 このために、日食の終わる頃に「18年後、北海道でまた会おう!!」と心の中で叫び、心の中でクラッカーを鳴らした(笑)。 そして、無事日食の全過程が終了した。

欠けていない太陽を撮影してから、撮影された画像をチェック。金環日食が考えていたよりも短かったために、リングとなった太陽の撮影枚数が少なくなってしまったのは残念だった。 メモリーへの書き込み速度を考慮して5秒毎にしたが、2秒〜3秒にしても良かったと後悔した。
金環日食全経過
金環日食全経過
○帰途へ

機材の撤収を完了してから、S氏に挨拶をして峠の茶屋を出発した。このまま帰るのは勿体無いので、当初の予定通り、観光をしながら帰ることにした。 具体的には来るときに暗くてよく見えなかった道路沿いの「やしおつつじ」を車の中から眺めながらゆっくりと降りて、湯元温泉に入ることにした。来るときと異なり、のんびりと帰って、自宅に戻ったのは16時前だった。

○終わりに

今回の金環日食は居ながらにして見られるという非常に稀なものだった。マスコミの騒ぎも尋常ではなく、新宿駅南口や東京駅近くで金環日食を眺める通勤途中の人たちの映像が何度も流れた。 天気の方は予報よりも良くなって、雲が切れたり薄くなったりして、東日本を中心にリング状の太陽を見ることが多かったようである。 宇宙から気象観測をしている多目的衛星ひまわり7号からも日本列島を通過する月の影が撮影されている。
日本列島を通過する月の影
日本列島を通過する月の影
右上図は、http://webgms.iis.u-tokyo.ac.jp/からダウンロードしたものを元に筆者が作成。
日食に向けての周知啓発もこれまでないほど行われた。特に日食網膜症に関しては、何度も注意すべき事項がマスコミを通じて報道された。 それでも太陽を裸眼で直視するなどして、小学生を中心に何人か眼科に行ったことも報道されている。 これらのことは、今後の日食観望に生かしておく必要があるだろう。

私自身の方は、普段行う海外遠征の場合は、テーマを考えて機材を絞り込んで臨むところを、今回は機材を何でも持っていけるという考えが発生して、 それぞれが中途半端になってしまい、結局失敗してしまった面もあるのは、今後とも忘れてはいけないと思う。
以上
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