日本横断金環日食

Keietsu Sayama
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(1) 金環日食概要
2012.5.21の金環日食〔サロスbP28…58/73〕は、南からベトナムと中国・海南島に挟まれたトンキン湾で日の出金環日食となり、雷州半島から中国南海岸沿いに台湾の台北まで見られます。 日本ではトカラ列島から太平洋ベルト地帯に沿って横断した後、太平洋を横断して米国テキサス州で日没となります。

1サロス前の1994.5.10は、ハワイ南東沖からメキシコ・米国を通過してアフリカ・モロッコにかけて見られました。 米国では、メキシコ国境に近いエルパソやナイアガラの滝などを金環帯が通過しました。エルパソでは終始晴天の下、金環日食が観測されたそうです。 この時テレビ朝日の取材クルーが現地で撮影をしていて、後日その模様が深夜に放送されました。題名は金環食 テレビ朝日のハイビジョンライブです。 テキサス州のエルパソで金環日食を観測中に、ミュージシャンの奥本亮さんがライヴ演奏していた映像が流れました。
2012年5月21日の金環日食帯地図
2012年5月21日の金環日食帯地図
その時に観測された金環日食と今回の金環日食が同じ規模と言うことで取材されたのですが、当時の放送を知っている方は殆どいないと思います。 この放送は関東ローカルで深夜枠の放送であったため、マニアでも放送された事実を知らない方が多いと思います。私は当時の放送をVHSビデオに収録していますが、ビデオデッキが壊れているので十数年近く見ていません。

3サロス前1958.4.19の金環日食は、継続時間が地球上で一番長い正午中心食が台湾北東沖にありました。日本では金環日食帯が奄美大島とトカラ列島と八丈島を通過しました。本土では金環日食にならなかったものの、多くの方が真昼の大きくかけた部分日食を観測されたそうです。 今回の金環日食帯で正午中心食は、アラスカのアリューシャン列島南方沖です。全体的な金環帯は北へシフトしていますが、たまたま日本は人口の一番多い太平洋ベルト地帯を通過するので数年前から注目される日食となりました。
米国金環日食
1994年5月10日の金環日食帯地図

(2) 突然の遠征
天文をやっている者にとって欠かせない気象予報サイトが、http://weather-gpv.info/ 各地を細かく分けたメッシュ予報が特徴です。 天気の行く末が心配で、金環前日より頻繁にサイトを更新して見ていました。

実際に住んでいる周辺が降水色である薄紫が出た時は、観測地を変えざるを得ないと思っていました。仕方がないので、寝ずに気象情報と観測地を検討した結果埼玉県北鴻巣駅近くの公園へ行くことにしました。

GPV気象予報図
GPV気象予報図
2012年5月21日の朝4時40分、柿生の家を出ます。 北と北西の空が晴れていたので一瞬家を出るのを躊躇したのですが、ここで留まっていては後悔するという思いから柿生駅に向かいました。

列車は新宿方面に向かって北東に進みます。東京都内に入ってから柔らかな日差しが射しはじめました。新宿〜池袋〜赤羽と乗り換えて高崎線に乗ります。 若干興奮しているので寝ていなかったのですが、興奮の方が勝っていました。 太陽の方向を確認したかったのですが、太陽の方向と反対に座ってしまい前に立っていた
柿生駅
柿生駅
若者が大きな声で隣のヒトと話していたので嫌気が差しました。東の光とは逆の方向に太陽の光が当たっていることで、常に晴れて日が差しているのを確認します。

部分日食がだんだん欠けてきているのを知っていても窓越しから外の太陽を見られません。 数名は日食グラスを出して太陽の状態を確認しています。

ヤキモキしながら朝6時55分、やっと目的地の北鴻巣へ着きました。 ホームから減光フィルターで見た太陽は、既に半分近く欠けていました。急いで観測地に決めた赤見台近隣公園に向かいます。
北鴻巣駅
北鴻巣駅

北鴻巣駅前の観測地
北鴻巣駅前の観測地

(3) いよいよ観測
赤見台公園まではまず郵便局を目印に駅から東の方向に向かいます。少し歩いたところでちょうど良い木漏れ日が差す通路に太陽が出ていたので、急遽ここを観測地に決めました。 急いで店を開き、機材の準備に取り掛かります。携帯のワンセグからは金環日食が近づいていることを伝えるライヴニュースが流れます。 ワンセグから太陽の状態を確認しつつ、フィルターの準備をします。せっかく輪ゴムで固定したフィルターが外れてあせりました。 ここで結構な装備で観測しているヒトは物珍しい対象となるので、早速年配の方から色々と質問を受けました。

せっかくの現象を共有して戴きたいとの思いから、使っていないフィルターを貸して実際に肉眼でフィルター越しの太陽を見てもらいました。 また木漏れ日に映った部分日食が非常に貴重な現象であることを伝え、これが金環日食になると光の環が木漏れ日に吹く風でウネウネと流れるように揺れて見えることも伝えました。 太陽の方向しか向いていない方にとっては新たな発見と言ったところでしょうか?

急速に空は青く濃くなっていきます。それと共に太陽はますます鋭角となり、カチューシャ型の太陽が細くなってきました。すると鳥が鳴き始めました。明らかに異常事態です。 「普段と違う太陽を見ている鳥は驚いて鳴き始めるのですよ…」と年配の方々に伝えたら感心していたようでした。
部分日食の木漏れ日
部分日食の木漏れ日
(4) 金環再び…
やがて静寂の中、欠けた太陽のカチューシャの部分がつながり金環となりました。木漏れ日は金の環になって微風で揺れ動いています。 金環なので太陽の光の中での観測ですが、ワンセグのTV中継も大騒ぎです。

反対の縁が途切れ始めました。せっかくのベイリービーズの瞬間も映し損なってしまい、あっと言う間に4分40秒の金環日食が終わりました。いや〜ありがとう、ありがとう。こんなの今まで見たことがなかったよ。 …こちらこそ、色々と手伝っていただいてありがとうございます。

金環日食
金環日食
最初に声を掛けてきたおばさんが戻ってきました。観測の邪魔になるから金環日食の瞬間はTVで見ていたとのこと。 …非常に勿体無いと思い、「天文現象は肉眼で見て、肌で体感してこそ得難い体験があるんですよ〜」と思わず言ってしまいました。

部分日食も半分以上元へ戻った頃、通行人もまばらになり普段の北鴻巣駅前に戻りました。 太陽は欠けたまま、木漏れ日の半月も揺れています。フィルムもminiDV
TAPEも無くなったので部分日食中ですが撤収します。そして、日常を取り戻した北鴻巣駅へ向かいました。

部分日食
部分日食
駅に向かった頃、あいにく上野行きが発車してしまいました。次の列車まで10分以上あるので、反対方向へ一駅行ってから湘南新宿ラインに乗りました。 平日なのに混んでいて座れません。この状態が池袋まで続きました。足はパンパンになり更に疲れが増します。

夕方から出先に向かうので、一旦柿生駅に戻ってから90分近く仮眠を取りまた出かけました。今夜は泥のようによく眠れそうですzzz
観測地の木々と太陽
観測地の木々と太陽
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