もくせい
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■諦められないハオ島の夜 望遠鏡を南北線に沿って設置した後、カメラを望遠鏡にセットして撮影を開始しようと思った。しかしながら撮影にあたっては、極軸を完璧に合わせる必要がある。南半球の場合は、はちぶんぎ座の台形で合わせることになっているが、どうも低空の雲が多く(観測場所が南緯18度なので、正直天の南極の高度は高くない)、見えない状態が続いた。当初はS条氏に極軸を合わせてもらって、カメラレンズによる撮影の他にsky90による直焦点撮影も考えていたが、諦めざるを得なかった。エータ・カリーナが次第に沈みかけてきたので、この方面を優先的に撮影する必要がある。 初めは望遠気味に撮影したが、極軸を精密に合わせたわけではないので、どうしても流れてしまう・・・。望遠レンズでの撮影も諦めざるを得なかった。それよりももっと深刻だったのは雲であった。低空の雲であるが、風が強いために通り過ぎては晴れて、通り過ぎては晴れを繰り替えした。このためになるべく感度を上げて、短時間露光の撮影をせざるを得なかった。 21時だろうか、かろうじて見えていた星が次第に見えなくなってしまった。そうこうしているうちに雨が降り始めた。私はPTSから支給されたビニール袋を機材にかけてしのいだが、ほとんどの人は大慌てで退散してしまった。しばらくすると雨はやんで星が見え始めた。それでも雲が多い状態は続いた。そうこうしているうちに、またも星が全く見えなくなり、雨が再び降り始めた。今度は先ほどのものと異なり、かなり本格的だ!さすがの私も撤収せざるを得なかった。ピチャピチャ音がするほどの本格的な雨だ。もう駄目かな?と思ったが、しばらくすると再びやみ始めた。さすがに機材を広げる人は皆無だった。私もまた悪くなるのはないか?と思い、しばらく様子を見ることにした。 23時を過ぎると次第に晴れ間が大きく広がってきたので、慌てて機材を運び出した。今回はsky90を完全に外して雲台のみを取り付けた。拡大率も下げて、拡大しても100mm程度の軽い望遠程度で撮影することにした。セッティングをしている間にまたも、雲が所々に広がり始めたが、今回は私も諦めることができなかった。どうしても天頂にかかる銀河の中心を魚眼レンズで撮影したかったのである。この状態では雲が完全になくなるのは無理と思い、多少雲がある程度なら構わないということで、高感度・短時間露光という方針で撮影を開始した。マサさんをはじめ、他の人は部屋で寝ていたり、アマゾンさんは機材のある談話室(インスタントコーヒーなどが用意してあった)で他のメンバーとお喋りしていたりしており、この時点で庭に赤道儀にカメラをセットして撮影していたのは私一人であった。 日付が変わる前に魚眼レンズ及び広角レンズで数枚夏の銀河を撮影した。 このとき、南の椰子の木近くに動かない雲の塊が見えており、小マゼラン?と思った。撮影された画像をチェックすると小マゼランだった しかし、このまま小マゼラン・大マゼランを撮影し続けると、全く睡眠を取ることができない状態になり、日食観測に支障をきたすと考え少し横になってから撮影を再開しようと思い、一時撤収することにした。 ■大マゼランと小マゼラン 寝床で横になったが完全に寝てしまった場合明け方まで寝てしまう可能性があった。そこで長くても2時ごろまで目をつぶったまま横になって休むことにした。もしもの場合は、その時点で起きていたアマゾンさんに、2時になったらたたき起こして欲しいとお願いしておいた。 寝ている間にも全天晴れていたら・・・と思うとなかなか休めなかったが、とにかく目をつぶって休むことにした。 1時半頃、我慢できなくなって外の様子を見た 。空の状態は雲が流れているのは変わりなかったが、小マゼラン星雲が結構高く昇っていたので、赤道儀を再度前庭にセットして、最初に拡大率を抑えて撮像を開始した。液晶をチェックすると小マゼランそのものより、きょしちょう47番星(球状星団)が目立って写っていた。 椰子の木のほうを見るとなにやらぼやっとしたものが見え始めた。小マゼランよりも一回り大きい。大マゼラン?と思ってレンズを向けたが 、雲が多くなかなか全貌がつかめなかった。 雲の切れ間の中で撮影できたものをチェックすると明らかにイスカンダル星?がある大マゼラン星雲であった。まだこの時点では高度が低いので、小マゼランを一通り撮ってから、大マゼランを撮ることにした。 椰子の木のそばに見えていた大マゼラン星雲を、雲に邪魔されながらも数枚撮影した。それから時計をチェックすると、朝食開始時間である4時が迫ってきた。赤道儀とカメラ類を再度撤収して食事会場に向かった。 ■朝食とセッティング さすがに朝食だけあって、パンやハム、果物などヘルシーなメニューであった。食事会場でしばらくしゃべってから外を見ると薄明が始まっており、何人かは望遠鏡を前庭にセッティングを始めていた。 私も大急ぎで赤道儀を談話室から、前日の日中確保しておいた小テーブル?を温室から運び出して、セッティングを開始した。また、談話室前に置いてあった椅子も運び出した。 東の空が次第に朝焼けに染まるころ、リゲルがベテルギウスより先に昇ってくるなど、さかさまに昇ってくるオリオン座を見ることができた。 またこれより先に、カノープスがシリウスよりも先に上ってきた。カメラ用の三脚は用意していなかったが、是非ともこの光景を撮影しようと思い、先ほどの小テーブルにカメラを乗せて、モータードライブ用の電池ボックスで角度をつけて、何枚か撮影を行った。このころになるとあれほど悩ませた低空の雲が消え始めた。 空はさらに白味を増して、次第に星が見えなくなってきた。そのころ、寝床で寝ていた人も起きてきた。海岸線に接する部分の高台には日の出を撮ろうと、マサさんをはじめ多くの方が一列に並んでいた。私自身は望遠鏡のセッティングが完璧に終わっていないことと、雲越しの日の出になりそうだったので、望遠鏡をセットしたところで太陽のアップを撮ることにした。 6時頃、雲の向こうから太陽が出てきた。今度は、グリーンフラッシュも分からなかった。太陽が次第に昇るにつれ、高台から人影が消えていった。私の隣にはマサさんが陣取ったが、撮影は行わないので望遠鏡と三脚のみであった。 |