2サロス目の皆既日食・観測編
Keietsu Sayama
(7)観測前夜のバカ騒ぎ
傍若無人な欧米人に腹を立てながら日没を見送ったあと、夕食を取ろうと食堂テントに向かいました。なんと、既に百人くらい並んでいるではありませんか!グリーンフラッシュも見ないで我慢して夕食を待ったのでしょう。でも食堂の準備が遅く午後8時から開店するそうです。
日没から一時間近く間があるので、日食談義に花を咲かせているツアー客の近くで話を聞いたり食堂の近くに行ったりしました。主催者側が気を利かせたのか周りの電灯が"フッ"と消えました。その瞬間、溢れんばかりの
シリウスとカノープス
シリウスとカノープス
星々が…あまりに素晴らしい星空でopen待ちの人々の歓声がこだましました♪まるで手を伸ばせば届くかのような天の川。天の川の周りには、まるでプラネタリウムのような星空が広がっていました☆彡
無駄に動くのもなんだし、しばらく悠久の時代から続いている星空を眺めました。観測地は北緯28度なので、奄美大島と同程度。全天一明るいシリウスと二番目に明るいカノープスが縦に並んでいるのがハッキリ確認できました。南十字星は夜半過ぎに南中するので見られません。撮影機材をテントに置いたのが恨めしいです。
Eclipse city Jalu southの夕食
Eclipse city Jalu southの夕食
8時から食堂が空くのに、同心円状に集まった行列で9時になっても入れません。食堂の中でもUの字に行列が連なり、腹を空かして限界に近くなった10時頃やっとありつけました。写真で見える黄色い粉のようなものはアラビア名物クスクスです。実際に食べるとあまり味はしなくて、水が欲しくなる煎餅の粉のようなものです。
食事を終えてシャワーを浴びようとしたら、冷たすぎて入れません。どうやら温水は出ない構造のようです。歯だけ磨いてそそくさと出てきたらアラブの踊りに出くわしました。その踊りは食堂のテントを抜けてアサッテの方向
Eclipse city アラブの踊り
Eclipse city アラブの踊り
に行きました。真夜中、そろそろ熟睡しようとしてもアサッテの方向からアラブの踊りと民俗音楽らしい音が聞こえます。おまけに花火まで打ちあがり、まさにお祭り騒ぎ。こっちは寝て明日の撮影のために体力を温存したいのに外気の寒さも加わり中々眠られなかったです。

体が冷えてトイレに行きたくなったのが午前4時頃。用を済ませて寝ようとしても眠られません。仕方ないので朝陽を撮影するため機材の準備をしました。昨日のグリーンフラッシュのリベンジです。
Eclipse cityに打ち上がった花火
Eclipse cityに打ち上がった花火
欧米人に邪魔されたくないので、テントから東へ1km離れた場所で太陽が昇るのを待ちました。気温を測ると、なんと5℃!どうりで寒くて睡眠も浅かったワケです。東の空が仄かに明るくなってきました。だんだん空に赤みが増してきて午前6時27分頃、太陽の一部が姿を現しました。昨日より大気が清浄ではないようで、グリーンフラッシュが見られなかったです。太陽は楕円形から真円になってゆきます。それと共に高度が高くなり気温も上がりました。そろそろ日食用の機材の準備と朝食も取りに行かなくては…テント食堂には例の如く朝陽を見ないで一番前に並んでいる人がいます。何と同じツアーの方でした!こんな素晴らしい自然の環境で、地平線から昇る朝日を見なくて良いのでしょうか?
サハラ砂漠の日の出
(8)数々の失敗が積み重なり…
朝食後、機材のセッテングに取り掛かります。まず場所取りから…観客に邪魔されたくないのでなるべく遠いところにしました。テントの近くにあった椅子を遠くまで運びます。ちょうどmharさんが近くだったので、御一緒させていただくことにしました。テントに戻り三脚4本、ビデオカメラ2台、一眼レフ2台をそれぞれ三脚に固定します。レンズを取り出してそれぞれにセットします。だんだん暑くなり、テントにこもる時間が増えました。あと一時間で第一接触が始まる時にようやく荷物を運び出します。
第二接触ダイヤモンドリング
第二接触ダイヤモンドリング
真夏並みの強い日差しの中、所定の位置に機材が並びました。次にフィルターの取り付けを確認しようとピントを合わせながらファインダーを覗こうとしたら煙と共に眩しい光が??レンズを見たらフィルターが焼けていました!どうやら接眼側にフィルターを入れたのがまずかったらしく、別なフィルターをレンズ側に付け直すはめに。これで気が動転してしまい、反射望遠鏡の差込式フィルターを触っていたら切り替えバネが外れて取り付けられなくなりました。慌ててテープを貼り、差込式フィルターを固定させます。こうなると気の動転が治まりません。 Sahara Eclipse
Sahara Eclipse
太陽高度が高いので三脚が上手く移動せず、ピントも合わないまま撮影しました。その時は撮影に夢中で、ピントが合っていなかったことに気づかなかったのです。最後のピント合わせのチャンスである第二接触直前にフィルターを外しピントを合わせました。でも気の動転が勝っていたのか冷静な判断が出来なくなっていました。長い皆既時間にピントが合わないコロナを撮るのは1991年7月11日のメキシコ以来です。特に1秒近く露出した外部コロナの写真は、太陽に内接する月がフットボールのような形に現像されていました。あまりにも酷い写真なので棄てました。写真は露出時間が短いものを掲載しています。更に悲劇は続くもので、皆既終了後にビデオカメラの確認をしましたが、録画と停止ボタンを 第三接触ダイヤモンドリング
第三接触ダイヤモンドリング
逆に押したようで肝心の皆既日食の瞬間が映らないと言う大失態を演じ、映像を配信出来なくなりました。

"三脚固定一眼レフでどれだけ入選作品を撮れるか"が私のテーマでしたが、脆くも崩れ去りました。所詮アマチュアの戯言に過ぎないのです。次の皆既日食は赤道儀と強い三脚を購入して、絶対に失敗しないような写真を撮らなければ…。3時に出発するので、急いで機材をトランクに入れてバスの中へ。出発まで十分ほど時間があったので、食堂で軽い昼食と水分を補給します。結局撮影中は食事をする時間もなくて断食状態でした。
撮影中の観測者
撮影中の観測者

☆私の日食観測履歴 (皆既日食は全て観測成功!)  場所と地域       天候  撮影
◎1988.  3.18   小笠原沖 皆既日食 (東アジア・父島南東沖)  晴れ  眼視
○1991.  7.11   メキシコ 皆既日食 (北米・カリフォルニア半島)快晴  失敗
×1992.  1. 4   アメリカ 金環日食 (北米・ロサンゼルス沖)   曇   不可
○1994.11. 3   チ リ  皆既日食 (南米・チリ北部)     薄曇  失敗
○1995.10.24   タ イ  皆既日食 (東南アジア・タイ東部)  快晴  成功
○1997.  3. 9   シベリア 皆既日食 (北アジア・シルカ郊外)  快晴  成功
○1998.  2.26   ベネズエラ皆既日食 (南米・ベネズエラ西部)  快晴  普通
○1999.  8.11   ブルガリア皆既日食 (ヨーロッパ・黒海近郊)  快晴  失敗
○2001.  6.21   ザンビア 皆既日食 (アフリカ・首都ルサカ)  快晴  成功
◎2002.12. 4   オーストラリア皆既 (オセアニア・豪州南部)  快晴  普通
△2005. 4. 8  パナマ金環皆既日食 (中米・パナマ西部の街)  薄曇  普通
○2006.  3.29   リビア  皆既日食 (アフリカ・サハラ砂漠)  快晴  失敗
○…第一接触〜第四接触まで観測 ◎…第一接触〜第三接触まで観測 ×…観測不可能
△…食分70%前後は薄雲越しに観測可能 撮影の成功基準は雑誌に掲載されるようなレベルの写真
観測地の位置
観測地の位置・・・太陽印が観測点です     観測地のGPS 28°13´49.08" N   21°30´24.00" E  標高 213m
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