炎天下の皆既日食・観測編

(12)ピンポイントに曇られたコロナ

観測地の気温は、42℃から食分90%になると36℃まで下がっていました。この間、本影錐用の撮影機材2台が動作せず悪戦苦闘していました。拡大撮影用のカメラで皆既日食の瞬間を迎えるしかない状況となりました。

それなのに欠けた太陽は、午後から水蒸気のせいで発生する日食雲に覆われはじめました。何とか雲が抜けることを祈りながら写真を撮り続けていたのですが、ついに雲の向こうで皆既日食がはじまりました。企画者として、1年半も前から綿密な計画を立てた結果がこれか…

三塘湖の悲劇 撮影miyu様
三塘湖の悲劇…撮影miyu様

…コロナが見られることを主目的としたので、本影錐の写真も失敗しました。何とかピントを合わせようと雲間のコロナを狙って500mmF8でピントを合わせてから2倍のテレコンバーターを付ける予定が、雲間からダイヤモンドリングが現れました。何としても皆既日食を見た証を残したい一心で最後の気力を絞りながら撮影しました。現像された結果は、どうだったでしょうか?

ファインダー越しに、ベイリービーズが数珠のように連なっている様子が確認出来ました。初めて生でコロナを見ることが出来なかったので、茫然自失でした。

三塘湖の悲劇 撮影miyu様
三塘湖の悲劇…撮影miyu様

それと同時に企画者として私を信用して参加された皆様に申し訳ない気持ちで一杯となり、この場から逃げ出したくなりました。冷静に考えるとバスで逃げるしか道がなかったので、それは諦めて抜け殻状態のまま部分日食を撮影していました。早く部分日食も終わればいいとさえ思っていました。

テントに機材一式を置いて、食堂に使っているテントへ向かいます。皆さん残念そうな表情です。それでもデジカメを持っている方がプロミネンスとダイヤモンドリングを皆さんに見せていたので、改めてダイヤモンドリングを確認したと同時に安堵感で一杯になりました。

三塘湖の悲劇 撮影miyu様
三塘湖の悲劇…撮影miyu様

デジカメは結果がすぐ出て、失敗作は消すことが出来ます。でも大気の空気感とコロナやダイヤモンドリングのコントラストを微細に表現するには銀塩FILMが一番なので、これからも使い続けることにします。抜け殻なので夕食もそこそこに切り上げて、熱さにやられたのでテントの脇でゴザを敷いて横になりました。

薄明の空を眺めながら、そのまま宙を見つめています。やがて天文薄明となり、明るい星々が見えてきました。その近くには熱中症になって吐いてしまい、テントから動けない方も横になって寝ていました。

雲間からのダイヤモンドリング
雲間からのダイヤモンドリング

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