炎天下の皆既日食・観測編

(11)北京時間と新疆時間

午後5時半…第一接触まであと30分と言うところで、やっと重い腰をあげて観測場所の選定に取りかかりました。太陽は真西に沈むので、本影錐の撮影に邪魔とならないよう一番西の道路脇で観測しました。近くの小高い丘には、軍人が銃を持ってこちらを監視しています。軍人は撮影禁止なので、文章だけに留めておきます。

元々モンゴル国境付近は一般人が入られない軍の管轄となっています。決められた場所を越えて逃亡するようなら、銃口を向けられて一巻の終わりです。我々が観測地の一番奥に陣取っていたので、一番北に近い地域

機材の設置と準備
機材の設置と準備

…つまりエリア内の北西で観測しました。気温は常に計測出来るよう、温度計を首からぶら下げていたのでラクに確認出来ました。直射日光を浴びた温度計は、午後6時近いのにも関わらず42℃となっていました。実際には北京時間に合わせた時刻表示なので、午後4時頃の太陽です。

新疆時間では、北京時間から2時間遅らせて生活している方が多いです。特にこの地方に多いウィグル人がその時間を使っています。ヒトとの待ち合わせで新疆時間と北京時間を区別なく使うと、大変なことになります。ニュースでも新疆のウィグル人が…と報道されていますが、元々住んでいたのはウィグル人です。

日食メガネで観測中
日食メガネで観測中

ウィグル人にしてみれば漢民族が勝手にやってきて、「ここは中国にとって新しい領土だから、新疆と名づけよう」とされ家も高級な生活も盗られてしまい、敵以外の何者でもないと思います。実際に生活が潤っているのは漢民族、貧しい生活はウィグル人…となってしまったので、東トルキスタン独立運動の影響で各地にテロが起きたと思います。

観測が終わってから一週間もすれば、中国初のオリンピックが始まります。東トルキスタンは、トルコの東と言う意味。イスラム教も哈密まで普及していて市街にはモスクが見られます。

東トルキスタン国旗
東トルキスタン国旗

住民の半数はウイグル族が占めていて、他に漢族、カザフ族、回族、モンゴル族、満族など多くの民族が住んでいます。中華人民共和国成立以後、漢族の流入が多くなっています。この地区の北西部には漢族と回族が多く、南西部にウイグル族が多いです。南西部のカシュガルは、人口の80%がウィグル人なので、彼らの姿が目によく付きます。

後述しますが、カシュガル民謡と言うのも彼ら独特の節回しで演奏しています。これは聞いていて非常に心地よく、カシュガルの牧歌的な風景が思い浮かべます。もしテロなどが起こらなければ、皆既日食観測を抜きにしてでも行ってみたい場所の一つです。

部分日食
部分日食

次へ