Green Sunset 【黒い金星に緑の太陽】
Green Sunset 【黒い金星に緑の太陽】

マサ

日本では130年ぶりの金星日面通過。前回の頃は日本は明治時代に入りたてで、近代化を進めている最中の時代です。この時はアジアが比較的観測条件が良く、この鎖国解除直後の秘境日本にアメリカ、フランス、メキシコから観測隊がわざわざ来日したというからオドロキです。そんな珍しい現象を今回、見られるチャンスがやってきたのはとても嬉しいこと。世界7大陸を股にかけ、4大天文現象(皆既日食、大彗星、流星雨、オーロラ)をコンプリートしている(笑)私にとって、この現象を見ないのは大変失礼なこと(笑)と思い、観測することと致しました。
空撮した利尻富士

 海外参加が普通の皆既日食とは違い、幸い今回は国内で見られるこの現象。自宅の庭先でのんびり見ればいい。とタカをくくっていたら大間違い。梅雨時の日本でそんな悠長なことは出来ませんでした。
前週から天気の徹底調査の結果、当日唯一の晴天が見込まれる稚内に飛行機で飛んだのでありました。機内からは青空の中、眼下に利尻島がクッキリと見えてとても感動的でした。稚内ノシャップ岬での観測でした。

観測地ノシャップ岬

午後2時すぎ、晴天下の刺すような日射しの中、第1接触、第2接触と、ソーラーフィルター越しに天体望遠鏡で見る金星は、何度かの水星太陽面通過をみているからかもしれませんが、すごく大きくて水星が巨大化した感じでした(笑)。とにかく、いま生きている人間の中で、前回(世界的には122年ぶり)この現象を見ている人はひとりもいないわけで、私にとっても未曾有の体験でした。だんたんと日没が近づき、周りは黄昏色に染まっていきます。それでなくてもここ
ノシャップ岬は夕陽の綺麗さでの観光スポットです。

第二接触ブラックドロップ現象

日没寸前、裸眼ではっきり黒い金星が見られました。再びソーラーフィルターを付けた双眼鏡で太陽を覗くと、夕方の厚くなった大気の影響でその金星の黒いシルエットはまるでアメーバーの様にゆらゆらし●から▲になったり■になったりして面白かったです。 日本海の水平線(ほんのちょっとだけ雲があり)に金星が没し、ついで太陽が没する瞬間でした。私はちょっとまぶしかったのですが、双眼鏡の先端に付けたソーラーフィルターをはずし、ノーフィルターで太陽を見ていました。
アメーバ−状にゆらぐ金星

 すると、オレンジの太陽光が急にグリーンの閃光に変わり、双眼鏡で拡大されたその色は、目が覚めるようにとてもあざやかで、(バックの空が反対色のオレンジ色なので余計にそのグリーン色が)とても言葉では表現出来ないほど美しく感激致しました。 グリーンフラッシュが見られたのです。私はグリーンフラッシュをまだ一度もお目にかかったことがありませんでした。でも一生のうちに一度は見てみたい夢の現象でした。そしてその夢が、まさか金星太陽面通過のこの日の太陽で現実に起きるとは…
雲間からグリーンフラッシュ

「棚からぼた餅」いや貴重な現象(金星太陽面通過)を見ている時にまた貴重な現象(グリーンフラッシュ)が起きたのだから、「ぼた餅からぼた餅」なのでしょうか(笑)。
こんな状態になる確率は、はたしていったいどれくらいなのでしょうか?
@水平線(地平線)まで雲がない晴天(地平線近くに少しだけ雲はありました)
A金星太陽面通過中に日没(8年後は日本では第4接触後なので単なる日没となる)
Bその太陽が日没直前にグリーンフラッシュ

ノシャップ岬の夕陽

おそらく天文学的な確率だと思います。晴天を求めて日本の北端までやってきて本当に良かったと思いました。そして私は果たしてこの貴重な両現象の、いったいどちらに感動したのか?自問自答の日々が続く今日この頃ですが、まだ答えが見いだせません。
完全に沈んだ夕陽
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