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太陽系9番目となる未知の惑星が海王星の外側に存在する可能性が高いことを、神戸大のパトリック・S・リカフィカ研究員と向井正教授が、詳細な理論計算で世界で初めて突き止めた。
今後、観測体制が整えば、10年以内にも発見されそうだという。この成果は、4月発行の米天文学専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」に発表される。
太陽系の縁では、「太陽系外縁天体」と呼ばれる1100個以上の小天体が、海王星軌道の外側を回っている。その多くは、8惑星と同じようなほぼ円形の軌道をとるが、なかにはそれと大きくずれている天体もあり、なぜそのような変則的な軌道を持つのかが大きななぞとして残されていた。
リカフィカ研究員らは、太陽系ができ始めて間もない40億年前から現在までの惑星や太陽系外縁天体の軌道の変化を、最も有力な太陽系形成理論にもとづいてコンピューターで計算した。その結果、水星から海王星までの8惑星では変則的な外縁天体の軌道を説明できず、新たな「惑星X」を仮想的に加えて計算することで初めて、それが可能になることがわかった。これが、惑星Xが存在することの理論的な証拠になるという。
リカフィカ研究員らによると、突き止められた惑星Xは海王星の外側にあり、長半径が150億~260億キロ・メートルの楕円(だえん)軌道を回っている。重さは地球の3~7割で、この領域に多い氷と岩石でできた天体だと仮定すると、直径は、地球の約1万2700キロ・メートルに匹敵する1万~1万6000キロ・メートルになるという。
惑星Xが太陽に最も近づく120億キロ・メートルの地点では、2006年に惑星から除外された冥王(めいおう)星と同じくらいの14・8~17・3等の明るさで見えるはずだが、他の惑星が回る平面と20~40度の傾きを持つため、見つからなかったらしい。
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■国際探索、10年以内に発見か
コペルニクスの地動説とガリレオの天体観測によって、人類が「地球は太陽系惑星の一つ」と認識してから約400年。現在までに新たに見つかった太陽系惑星は天王星(1781年)、海王星(1846年)の2つしかない。1930年に発見され「第9惑星」とされていた冥王星は、2006年に国際天文学連合が採択した惑星の定義から外れ、「準惑星」に位置づけられた。神戸大学の向井正教授らが理論的に存在を予言した「未知の惑星」が見つかれば、世紀の大発見となる。(中本哲也)
今回の理論予測の方法は、「天王星の軌道のふらつきから、海王星の存在を予言した19世紀の手法に似ている」という。
天王星に相当するのは、1990年代以降に海王星の外側(40~50天文単位)の領域で多数見つかった太陽系外縁天体だ。
これらの天体の軌道のゆがみや傾斜を説明するために、さらに外側に惑星クラスの大きな天体が存在すると仮定。膨大な数値シミュレーションの結果から、未知の惑星が存在する可能性が高いと結論づけた。
海王星が予言通りに見つかった成功にならい、20世紀初めには米国の天文学者、ローウェルが「海王星の外側にも惑星がある」と予言し「惑星X」と呼んだ。この予言は、弟子のトンボーによる冥王星発見につながる。だが、海王星のふらつきから惑星Xの位置を求めたローウェルの理論計算は間違いで、そこに冥王星があったのは奇跡的な偶然だった。冥王星には海王星の軌道を乱すほどの大きさはなく、発見から76年後に「惑星」から外された。
このような歴史的経緯から、向井教授らが予言した未知の惑星は、21世紀の「惑星X」と位置づけられる。ブラジル人研究員のリカフィカさんの元には「あなたたちの惑星Xは、国際天文学連合の定義を満たすのか」などと、各国のジャーナリストから質問が寄せられているという。
海王星より遠い天体では現時点で最大の準惑星「エリス」を発見した米カリフォルニア工科大のブラウン教授からは「わくわくする成果だ」という内容のメールが届いた。ブラウン教授らはエリスを「第10惑星」と主張し、結果的には冥王星が惑星から格下げされるきっかけになった。
新惑星は、ブラウン教授らが発見した太陽系最遠の天体「セドナ」と同程度の距離で、ずっと明るい。しかし、新惑星の軌道は、地球や木星などの軌道面(黄道面)から20~40度も傾いているため、黄道面周辺に限られたこれまでの観測では発見されなかった。
現在、米国、台湾を中心とする国際グループは、4つの望遠鏡を使って遠くの太陽系天体を探す計画を進めている。また、米ローウェル天文台も世紀をまたいだ「惑星X」発見に向けて、探索専用の天文台建設を計画している。
これらの計画が本格化し、黄道面から離れた場所まで探索範囲が広がれば「5~10年で新惑星が発見される可能性が高い」という。
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渡部潤一・国立天文台准教授の話 「非常に緻密(ちみつ)な研究成果で、新惑星が存在する確率は高いと思える。現在の定義では、周囲に同程度の天体がないことを証明することが必要で、発見と同時に惑星と認められるのは難しいが、改めて惑星とするかどうかが議論されるだろう。海王星の場合は、存在を“予言”した天文学者も、発見者とされている。予想通りの天体が見つかれば、向井教授とリカフィカ研究員の功績も天文学史に刻まれるでしょう」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080228-00000083-san-soci
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