■観測場所の治安 アフリカで最も懸念されるのが治安状況です。アフリカ中部は世界でも指折りの治安が悪い地域です。特に上記の赤で囲まれた地域は入域禁止区域となっています。道路も満足に発達していません。 また国境付近も治安が悪いので、そちらでの観測も避けたほうが無難です。天候が良くなるサバンナ気候のエチオピア南部地域は、あいにく観測に向くような治安とはならないでしょう。ウガンダとケニアとエチオピア西南部の皆既帯は渡航の是非を検討して下さい…と外務省が通達している海外危険情報に書かれています。このような状況ですと比較的安全に観測できる国は、ガボンとコンゴ共和国に限られます。 ■観測地点の概要 こちらではガボンで観測を計画されている方に、皆既帯の地図を御紹介します。 今回の金環皆既日食の1サロス前は、1995.10.24にインド〜東南アジアにかけて通過した最後の皆既日食でした。今回の金環帯は最初に月の擬本影がバミューダ沖の海上に接した後、すぐ月の本影が地表に接するので殆ど皆既日食であると言えます。 この皆既帯ですが、ガボンの国際空港であるリーブルビル空港とロペス岬を望むポールジャンティル空港のちょうど中間を通ります。アクセスはポールジャンティル空港の方が行きやすくなります。ロペス岬は皆既帯に入っていますが、南限界線のため僅か30秒程度しか皆既日食が見られません。観測地にするにはあまりにも不利なところです。 皆既帯中心線近くのBatangaに拠点を置いて、そこから南へ10kmほど行った道路に陸地では最も長く継続する観測地点があります。当地の第二接触時、太陽高度は47.4°となります。皆既継続時間は1分8.0秒となります。この値は月縁補正をしておりません。 月の形は、大幅にデフォルメすると下側に比重の置かれた洋ナシ型と形容されます。そのため月縁のクレーターの影響を受けづらくなっており、ダイヤモンドリングの出現を少しでも遅らせる効果があります。 そのため、Batangaから南へ11〜12kmほど南下した観測地で観測されたほうが賢明です。但し雲の影響は避けられないので、もし車両移動が可能ならば雲の動きを見ながら南北へ移動された方が良いでしょう。 ■観測地ロペス岬のDATA 2013.11.3の皆既帯が最初に陸地にかかるところはガボンのロペス岬です。ここも雲量が多くてあまり観測地にお勧めできない場所ですが、10km南下するとポートジャンティル空港があるのでアクセスは最適だと言えます。ちなみに、ロペス岬突端にある半島の南側が皆既帯の南限界線となります。ここより南側では部分日食しか見られません。 以下、ロペス岬の突端で赤い印が付けられた観測地の月縁補正されていないDATAです。 Cape Lopez 0° 37´ 10.4" S △T=68.8s 8° 42´ 41.5" E Magnitude at mid eclipse : 1.00062% Moon/Sun size ratio : 1.01269 total solar eclipse : 0m 30.0s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 12:11:00.4 +68.8° (C2) : 2013/11/03 13:49:26.2 +47.7° (MAX) : 2013/11/03 13:49:41.2 +47.7° (C3) : 2013/11/03 13:49:56.1 +47.6° (C4) : 2013/11/03 15:13:44.4 +27.8° ■前回のガボン金環皆既日食 金環皆既日食は、地球上空に月の影が交差した地点(遷移点)があります。これがごくまれに地球上で見られることもあります。このように月と太陽の見かけの大きさが全く同じだと、金環皆既日食 [Hybrid Eclipse]が見られます。 このように金環皆既日食とは全地球的に付けられた名称ですが、金環↔皆既の遷移点では金環皆既日食と言っていいと思います。理論上の遷移点では0秒の中心食(これこそが本当の意味での金環皆既日食)となりますが、全周に渡ってのベイリービーズしか見られません。これは、若干皆既側に寄らないと全周に渡ってベイリービーズとなってしまいます。ちなみに、遷移点では本影の幅が0qで継続時間も0秒。食分は1.000です。 1987年3月29日の日食は、日本人が初めて観測した金環皆既日食です。観測地となったガボンのPort Gentilと言う街で、日食情報センターのツアーが実施されました。陸上でわずかに金環帯に位置する観測地ですが、月のクレーターの谷間から太陽の光が漏れ出して全周ベイリービーズが見られました。観測地上空は赤道直下で、熱帯の雲に多少覆われました。そのためノーフィルターで撮影された方が多いです。その1サロス後の金環皆既日食でパナマに行きましたが、奇しくも薄い雲に覆われてノーフィルターで極細金環日食を撮影しました。 右の衛星写真は、1987年3月29日の金環皆既日食帯を示したものです。赤い線が金環皆既日食の中心線で、両脇にある青い線が南北限界線となります。金環帯の幅は僅か2kmです。このように全周に渡ってベイリービーズが見える状態を、かすり日食(Grazing Eclipse)と言います。 日 時 U T Saros 食分 高度 時間 △T 金環帯 1987年3月29日 13:35:15 129 0.99 59.2°3.6s 55.4 2km ■観測地点のデータ 右の写真は1サロス前の1995.10.24にタイのチョクチャイで撮ったコロナです。 この時は極小期型のコロナでした。2013.11.3は、極大期型コロナが見られる可能性があります。長らく太陽活動が停滞していたのですが、もし極大期型のコロナが見られるのなら2001.6.21以来、12年半ぶりとなります。 以下、ガボン国内の観測地DATAです。 皆既帯中心線に近いBatanga、中心線のCentral Eclipse、南部のGongoueと奥地のBifounを紹介します。 Batanga 0° 20´ 58.8" S △T=68.8s 9° 18´ 04.1" E Magnitude at mid eclipse : 1.00391% (食分) Moon/Sun size ratio : 1.01251 total solar eclipse : 1m 3.0s Event Date Time (UT) Alt Event 太陽の状態または欠け具合 (C1) : 2013/11/03 12:12:38.6 +67.9° Time (UT) UTとは世界時間。現地時間はUTから10時間足す (C2) : 2013/11/03 13:50:21.0 +46.9° Alt 太陽高度 (MAX) : 2013/11/03 13:50:52.6 +46.8° Moon/Sun size ratioとは、月に隠された太陽の比率を言う (C3) : 2013/11/03 13:51:24.0 +46.6° △T 太陽と月の日周運動に対する運動量の割合 (C4) : 2013/11/03 15:14:22.8 +27.0° △Tについては、こちらで説明しています。 Central Eclipse 0° 24´ 56.1" S △T=68.8s 9° 17´ 01.6" E Magnitude at mid eclipse : 1.00591% Moon/Sun size ratio : 1.01252 total solar eclipse : 1m 7.9s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 12:12:38.7 +68.0° (C2) : 2013/11/03 13:50:18.5 +46.9° (MAX) : 2013/11/03 13:50:52.5 +46.8° (C3) : 2013/11/03 13:51:26.4 +46.7° (C4) : 2013/11/03 15:14:23.1 +27.1° Gongoue 0° 32´ 31.6" S △T=68.8s 9° 11´ 50.2" E Magnitude at mid eclipse : 1.00281% Moon/Sun size ratio : 1.01255 total solar eclipse : 0m 56.8s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 12:12:28.7 +68.1° (C2) : 2013/11/03 13:50:16.6 +47.1° (MAX) : 2013/11/03 13:50:45.1 +46.9° (C3) : 2013/11/03 13:51:13.4 +46.8° (C4) : 2013/11/03 15:14:19.5 +27.2° Bifoun 0° 17´ 57.8" S △T=68.8s 10° 26´ 35.5" E Magnitude at mid eclipse : 1.00292% Moon/Sun size ratio : 1.01218 total solar eclipse : 0m 55.7s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 12:16:11.6 +66.3° (C2) : 2013/11/03 13:52:55.1 +45.2° (MAX) : 2013/11/03 13:53:23.0 +45.1° (C3) : 2013/11/03 13:53:50.8 +45.0° (C4) : 2013/11/03 15:15:44.3 +25.6° ■各天体の位置と高度 2013年11月3日 14時50分0秒 (現地時間) 南緯 0度21.0分 東経 9度18.0分 で観測した場合 太陽 Sun 月 Moon 赤経:14h34m43.2s 赤緯:-15°09´37" 月齢: 0.0 視直径:32.7´ 輝面比:0.00 赤経:14h31m58.3s 赤緯:-14°56´31" 赤経:14h34m42.8s 赤緯:-15°09´43" (J2000) 赤経:14h35m28.2s 赤緯:-15°13´06" 赤経:14h31m57.9s 赤緯:-14°56´37" (B1950) 黄経:221°18´02" 黄緯:+00°00´04" 赤経:14h35m27.8s 赤緯:-15°13´11" (視位置) 銀経:336°41´35" 銀緯:+40°50´08" 黄経:221°17´58" 黄緯:+00°00´11" 方位: 67.592° 高度: 47.447° 銀経:336°41´25" 銀緯:+40°50´06" 出 6:02 南中12:08 没18:10 食分:1.00 方位: 67.590° 高度: 47.445° 地心距離:0.99191 AU 出 5:50 南中12:03 没18:16 地心距離:37.02万km 水星 Mercury 土星 Saturn 光度:5.2等 視直径:9.8" 輝面比:0.01 光度:0.6等 視直径:15.2" 輝面比:1.00 赤経:14h19m29.7s 赤緯:-13°50´25" 赤経:14h47m34.2s 赤緯:-13°55´36" (J2000) 赤経:14h16m46.7s 赤緯:-13°36´39" 赤経:14h44m49.6s 赤緯:-13°43´06" (B1950) 赤経:14h20m14.2s 赤緯:-13°54´04" 赤経:14h48m19.2s 赤緯:-13°58´54" (視位置) 黄経:217°23´13" 黄緯:-00°04´36" 黄経:223°53´24" 黄緯:+02°07´06" 銀経:333°12´45" 銀緯:+43°47´08" 銀経:341°00´48" 銀緯:+40°11´48" 方位: 70.787° 高度: 6.761° 方位: 68.019° 高度: 50.780° 出 5:51 南中11:52 没17:53 出 6:18 南中12:20 没18:22 地心距離:0.68334AU 日心距離:0.31366AU 地心距離:10.85738AU 日心距離:9.86735 AU ■アフリカ東部のデータ 右は2002.12.4に豪州・リンドハーストで撮った全周彩層が映った写真です。この皆既日食はたった24秒しか継続時間がありませんでした。非常に継続時間の短い皆既日食の場合、このような写真の状態で中心食が見られる可能性が高いです。 ガボンでは、これより長く皆既が継続するので月と太陽の縁がそれほど重なった状態とはなりません。ウガンダとエチオペアでは太陽高度が低くなるので、写真のような紅色に輝く彩層やプロミネンスが見えるでしょう。以下、ウガンダとエチオペアの観測地DATAです。ウガンダでは雲量が70%近いのですが、エチオペア南部では雲量が60%と皆既日食の観測条件が良くなります。 Kongo Bomili 1° 38´ 22.1" N △T=68.8s 26° 59´ 58.5" E Magnitude at mid eclipse : 1.00319% Moon/Sun size ratio : 1.00679 total solar eclipse : 0m 29.8s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 12:58:23.3 +41.8° (C2) : 2013/11/03 14:18:31.1 +22.9° (MAX) : 2013/11/03 14:18:46.0 +22.8° (C3) : 2013/11/03 14:19:00.9 +22.8° (C4) : 2013/11/03 15:27:00.4 +06.4° Uganda Gule 2° 45´ 43.2" N △T=68.8s 32° 17´ 39.5" E Magnitude at mid eclipse : 1.00022% Moon/Sun size ratio : 1.005 total solar eclipse : 0m 20.6s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 13:07:30.5 +34.3° (C2) : 2013/11/03 14:22:53.0 +16.4° (MAX) : 2013/11/03 14:23:03.4 +16.4° (C3) : 2013/11/03 14:23:13.7 +16.4° (C4) : 2013/11/03 15:27:50.2 +00.9° Etiopea Mega 4° 11´ 34.9" N △T=68.8s 38° 16´ 15.1" E Magnitude at mid eclipse : 1.0011% Moon/Sun size ratio : 1.00301 total solar eclipse : 0m 11.4s Event Date Time (UT) Alt (C1) : 2013/11/03 13:15:23.4 +26.4° (C2) : 2013/11/03 14:26:00.9 +09.6° (MAX) : 2013/11/03 14:26:06.6 +09.6° (C3) : 2013/11/03 14:26:12.3 +09.5° (C4) : 2013/11/03 15:27:30.6 -05.1° ■各天体の位置と高度 2013年11月3日 17時26分0秒 (現地時間) 北緯 4度11分34.9秒 東経 38度16分15.1秒 で観測した場合 太陽 Sun 月 Moon 赤経:14h34m49.0s 赤緯:-15°10´05" 月齢: 0.0 視直径:32.4´ 輝面比:0.00 赤経:14h32m04.1s 赤緯:-14°56´59" 赤経:14h34m48.8s 赤緯:-15°10´06" (J2000) 赤経:14h35m34.0s 赤緯:-15°13´33" 赤経:14h32m03.9s 赤緯:-14°57´01" (B1950) 黄経:221°19´30" 黄緯:+00°00´04" 赤経:14h35m33.8s 赤緯:-15°13´34" (視位置) 銀経:336°42´51" 銀緯:+40°49´01" 黄経:221°19´28" 黄緯:+00°00´06" 方位: 73.755° 高度: 9.951° 銀経:336°42´47" 銀緯:+40°49´01" 出12:10 南中18:10 没00:10 食分:1.00 方位: 73.755° 高度: 9.951° 地心距離:0.99193 AU 出11:53 南中18:02 没--:-- 地心距離:37.01万km 水星 Mercury 土星 Saturn 光度:5.1等 視直径:9.8" 輝面比:0.01 光度:0.6等 視直径:15.2" 輝面比:1.00 赤経:14h19m23.0s 赤緯:-13°49´21" 赤経:14h47m34.9s 赤緯:-13°55´39" (J2000) 赤経:14h16m40.0s 赤緯:-13°35´35" 赤経:14h44m50.3s 赤緯:-13°43´09" (B1950) 赤経:14h20m07.5s 赤緯:-13°53´00" 赤経:14h48m19.9s 赤緯:-13°58´57" (視位置) 黄経:217°21´20" 黄緯:+00°05´04" 黄経:223°53´34" 黄緯:+02°07´05" 銀経:333°11´26" 銀緯:+43°48´50" 銀経:341°00´56" 銀緯:+40°11´39" 方位: 75.524° 高度: 6.433° 方位: 74.609° 高度: 13.152° 出11:59 南中17:56 没23:53 出12:25 南中18:23 没00:25 地心距離:0.68357AU 日心距離:0.31359AU 地心距離:10.85742AU 日心距離:9.86735 AU |
このフェルフェルと言う街がエチオピアとソマリアとの国境にあるのですが、衛星写真を御覧になると植生が砂漠なので1〜2秒だけでも皆既日食を確実に見たい方にはお勧めです。交通手段はフェルフェルから車で行くしかないでしょう。ソマリアは治安が悪いので、エチオピアから行った方が良いと思います。 エチオピアとソマリアは大変治安が悪いので、この地域も机上旅行で留めるようにして下さい。 |