これは何と言っても瞳のようにはかないコロナの美しさです。私は、初めて肉眼で皆既日食を見た1988年3月18日の小笠原沖での経験を生涯忘れることはないでしょう。
それまで地上を照らしていた太陽が月に蝕され、気温も下がって夜のように寒くなるのが肌で感じられる。やがてダイヤモンドリングを迎えると歓声が聞こえ、薄紫色の空に同心円状の蛍光灯のようなコロナが輝く。コロナの縁には、ループ状のプロミネンスが紅く濃く見える。太平洋の水平線は全周に渡って夕暮れ時の薄明が見られ、そこから太陽の方角へ行けば行くほど空が暗く濃くなってくる。皆既日食はまさに五感をフルに感じられる稀有な天文現象です。
太陽と月と地球の順で見られるのは昼に見られる日食。太陽と地球と月の順で見られるのが夜に見られる月食です。発生の頻度は日食の方が多いのですが、中心食(皆既や金環)は地球のどこかで年に1回か2回の割合で月の影が地表に落ちる限定された地域(皆既帯)に入らないと皆既日食は見られません。それ以外は部分日食となります。太陽より月の見かけの大きさが小さいと金環日食(月が太陽を隠しきれない分だけ環状に光る太陽の光輪が見られる)となります。この場合は太陽の光がまぶしくてコロナが見えません。写真の撮り方によってはプロミネンス(太陽の黒点同士が結び付いた磁力線の形。羽毛のように赤く見える)を確認できます。内惑星(水星と金星)は金環でも見られます。 右の写真を参照→
月食は地球が月を隠すので、皆既の状態が二時間余り続きます。夜であればどこからでも見られるので、2〜3年に一回は日本でも見られます。ところが日食は先程の理由により、数年先でも見られないのです。皆既日食の継続時間は平均して2〜3分しか続きません。また月食のように場所を変えないで見ると、平均して300〜400年に一回しか起こりません。
例えば青森県では1742年6月3日に皆既日食が見られて以来、2063年8月24日まで皆既日食は見られません。これだけでも321年の間隔が空いています。次回の皆既日食は、むつ市で5分、弘前市で約3分近く継続します。
このように居ながらにして見られる皆既日食が生きているうちに見られないので、皆既日食が見られる場所まで遠征してその都度コロナの余韻に浸っているワケです。
皆既の終わりは、お祝いの時間。このようなすごい体験を共有すると、参加者同士の会話はいきいきとしたものになる。その時に一緒にいた仲間は、一生の友人になります。
さぁ、あなたもこれから"黒い太陽にロマンを求めて"みませんか?今までの人生観がだいぶ変わるはずですよ!
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