シャドーバンドを科学する

2001.6.21 シャドーバンド映像(松浦氏撮影・解説)

シャドーバンドって何ですか?

シャドーバンドとは、第二接触直前と第三接触直前の短い間に地面を移動していく、ゆらぎのような透明な帯状の影のことです。

シャドーバンドは皆既中の太陽を眺めているだけでは分からない現象です。太陽と反対側の地面で起こる現象なので、皆既日食を見ていない時にだけ分かる現象です。私は一度も見ていないので、以下の記述は机上の空論です。

また皆既日食であれば必ず見えるものでもありません。皆既帯の幅、月の速度と皆既日食継続時間・月の影の移動方向・シャドーバンドの濃淡・観測地の気温なども観測場所の違いによって様々で、アマチュア天文家の観測報告が期待される現象です。

太陽が薄雲に覆われたまま第二接触を迎えると、ダイヤモンドリングのような点光源の強力な光が乱反射されてシャドーバンドが見えにくくなります。シャドーバンドを観測するためには、完璧に晴れた空の下で観測する必要があります。

シャドーバンドは、地面に大きな白い紙や白い布を敷いておくと観測しやすくなります。観測拠点にゴザの代わりとして敷くと良いでしょう。また観測場所(ホテル等)の白い壁にシャドーバンドが移動する様子も報告されています。

1997年3月9日シベリア皆既日食では、宿泊先の周囲が雪で覆われたホテルから観測された方がいました。観測者によると、雪の上でもシャドーバンドが見られた…と言う報告がありました。

シャドーバンドは、気象現象に類似するカゲロウやシンキロウのようなものが、点光源の太陽を通じて地面でも見られる現象だと考えます。また、密度の異なる大気が光を屈折させて起こる現象だと言う仮説も立てられます。

シャドーバンドの模式図
上空の大気の揺らぎがダイヤモンドリングによって地上で見られるシャドーバンドの模式図


様々な仮説のあるシャドーバンド

シャドーバンドは、実際に観測される方が少ないので仮説を証明するのが大変難しい現象と言えます。 弊掲示板で様々な仮説が立てられたので、ブン太郎様の記述をそのまま記載致します。

シュリーレン現象
温度境界面での全反射というのは、大きな大気の塊ではなく、対流途上の温度差のある空気がまさにシュリーレン現象を引き起こすような時を想定して言っているのかもしれません。つまり、もやもやと混ざり合うランダムな温度不連続面が無数に沢山できますから、屈折によるレンズ効果だけでなく、光線の方向と不連続面の角度によっては全反射も起こりうる場合があるとは考えられます。シュリーレン現象の揺らぎの一部にもそういう光があるのかもしれません。

また、別の解釈としては、マクロとして日食冷気(高気圧)が生じ、その温度勾配が生じると、日食高気圧の等圧線は同心円から移動を伴い滴状にでき、本影内から近傍ではほぼ円形とかんがえられますので、地表にちかい低層大気にごく微弱な寒冷前線が生じる可能性はあります。この前線面を光が通過すると少し上空に温度逆転層と不連続面がありますから、そこで全反射を来たしてもおかしくはなく、全反射面の地平面交線ベクトルは接触点角に一致してもよいわけですから、マクロの全反射と、不連続面でのミクロのシュリーレン現象が相まって、バンドの方向性が生じるという解釈もなりたつかも知れません。

シャドーバンド観測方法
幾何学的に考えると、偏光あるいは温度変化勾配分布が月と同心円状になることが関与しているという空論(=仮説)を提唱します。残念ながら今回は機材もなく間に合いませんが、もし過去にだれも行っていなければ、たとえNegativeデータであっても、シャドウバンド時の太陽光の偏光面測定を行えばNovelityがある学術的な知見となりうるでしょう。

たとえば、火の見櫓のようなものとか、ゾンデ気球を用いて、日食による気温変化が高度方向にどの様に変化するのかを経時的に調べることで、シャドウバンドが光源側の変化だけの問題なのか、日食帯の地表近くの微気候変化が影響しうるのかを推測する上でのデータになります。

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