ダイヤモンドリングを科学する

ダイヤモンドリングは、月と太陽の見かけの大きさによって見え方が違います。
月が太陽より大きい場合
月が太陽より大きい場合
月が太陽と同じ位の場合
月が太陽と同じ位の場合
ダイヤモンドは一点の光になる
ダイヤモンドは一点の光になる
ダイヤモンドが連なる光になる
ダイヤモンドが連なる光になる

左が3分14秒見られたザンビア皆既日食で、右が24秒見られた南オーストラリア皆既日食のダイヤモンドリングです。

☆白い線が実際の太陽の大きさで、月に隠された太陽の表面積が小さいほどダイヤモンドは一点に輝き、逆に広ければビーズ状となってダイヤモンドリングが連なります。また、月の秤動(首振り運動)によっても月の谷の形の違いでダイヤモンドリングの見え方が違います。

★秤動(ひょうどう):月の自転・公転運動によって地球から見える月の範囲が広く見えます。
例えば、地球の西の地平線と東の地平線で見た月や極地域から見た月は、天頂から見える月よりも多くの表面積が地球上で見える現象のこと。月を地図に直すと、全表面積の59%が地球から見える。つまり月の裏側が9%見えることになります。

■月にはクレーターがあり、地球のどの位置から皆既日食を見たかによってダイヤモンドリングの見え方まで違いが出てきます。ちなみに月は地球を約29日で公転して自転も約29日なので、月の真裏を見ることはできません。月の表面は溶岩の重い成分で出来た海で覆われて、裏面はクレーターに覆われています。月はいつも重い面だけを地球に向けています。

▲月と太陽の大きさがほぼ同じ位の時に見えるダイヤモンドリングのことを"ベイリービーズ"と言います。数分続く皆既日食は月と太陽の接触点が1つだけなのに比べて、数秒の皆既と金環日食では接触線となり密接に両者の縁が連なります。そのため、月のクレーターから多数の太陽の光が漏れてダイヤモンドリングが連なるリングとなります。これを英国のベイリーが発見したので、ベイリー・ビーズと言います。

▼ビーズ・ダイヤモンドリング
ビーズ・ダイヤモンドリング
ビーズ・ダイヤモンドリング

上の画像は、オリエンタルベイズン(東の海)と言うクレーター群から漏れ出した太陽の光です。地球からは見られませんが、月を真横から撮った画像では巨大なクレーターがあります。そこと太陽の縁が重なるとトップ画像のように見えます。 月は地球よりも小さく、北極や南極・朝か夕方に見ると僅かに裏側が見られます。月を見る観測者は、地球の中心以外の場所(例:日没や日出時は地球の中心からは端っこ)から見るため、また南北両極地方からも端なので月の表面は上下左右に動いて見えます。これを月の光学秤動(コウガクヒョウドウ)と言います。そのため地球からは月の裏側が見られるのですが、厳密に言うと59/100が見られる部分で41/100が逆に見られない部分です。月の秤動によって皆既日食の際に見られるダイヤモンドリングも毎回光り方が違うのです。更に月の軌道(白道)は楕円軌道でふらついているので、それだけ月の裏側が僅かに見えることもあります。

月の裏側
ガリレオ探査機が撮影した月の裏側の写真 (Photo by NASA)

上の画像はNASAのガリレオ探査機が撮影した写真です。写真中央にあるクレーターが地球からは直接見られないオリエンタルベイズン(東の海)です。このクレーターの特徴は、阿蘇山のようにクレーターが何重にもなっている地形です。皆既日食直前か直後。ちょうど月と太陽が重なり合った瞬間、オリエンタルベイズンと重なると写真のようなビーズ状に輝くダイヤモンドリングが見られます。

月の裏側
オリエンタルベイズン (Photo by NASA)
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