Eclipse Quest [日食の探求]

☆日食時の太陽と地球の位置

日食の種類は大別すると太陽が月に完全に隠される皆既日食、月が太陽に隠しきれない金環日食、太陽と月が部分的に重なる部分日食があります。
 月食の種類は大別すると月が地球の影に隠される皆既月食、月が地球の影に隠れきれない半影月食があります。日食のある前後15日には月食が起こります。

太陽は月の約400倍大きく、地球と月の距離よりも400倍離れています。現在は月と太陽の見かけの大きさがほぼ同じなので金環と皆既の二種類が見られます。月の公転周期は、やや楕円形なので約半月に一回地球に近づきます。地球の公転周期も僅かに楕円形なので、一年に一回は太陽に近くなります。

ところで新月の時にいつも日食が見られるわけではありません。それは、太陽と月の通り道が5度もずれていることによります。太陽の通り道は黄道(こうどう)で、月の通り道は白道(はくどう)と言います。昼間に太陽と新月の通り道がちょうど交差している時に限って、限られた場所でしか日食は見られないのです。その頻度は一年に二回発生します。部分日食しか起こらない年も一年に二回発生しますが、まれに一年で四回発生する年もあります。2000年と2011年は一年に四回、2018年は一年に三回部分日食が起こります。


★最後の皆既日食が起こる日…

私は『皆既』と言う本で、マーク・リットマン等が著作する本を和訳された資料をたまたま持ち合わせています。それによると、年に3.8cm月が地球から遠ざかる計算で行けば、皆既日食の回数はだんだん減って金環日食の回数が増えていきます。月と地球の平均距離が23,410kmより大きくなると、月が地球に最も近づいた時でも月の視直径は小さく、もう太陽を完全に覆い尽くすことが出来なくなります。その計算によると、最後の皆既日食の日は今から約6億2000万年後と言うことになるそうです。

参考までに4530年間の平均で日食のタイプを分類すると、
皆既日食 26.9% 金環日食 33.2% 金環皆既  4.8% 部分日食 35.2% となっています。
現在では比率に換算すると皆既:金環=4:5の割合なので、半々と言うよりは金環側にシフトしてきています。もし同じ割合だと、金環と皆既の最大継続時間の差が平均すると無くなるはずです。

ちなみに紀元前3000年から紀元7000年の間に起こる最長の皆既日食は、紀元2186年 7月16日にカリブ海沖で見られる"7分29秒"です。
紀元前3000年から紀元7000年の間に起こる最長の金環日食は、紀元 150年12月 6日にハワイ南沖で見られた"12分24秒"です。

最長の皆既日食は遠日点(7月上旬)の付近で起こる事が多く、最長の金環日食は近日点(1月上旬)の付近で起こる事が多いです。また、いずれも南北回帰線上で長時間見られます。これは極点より赤道の方が自転するスピードが速いことに起因します。更に正午に日食が起こると明け方や夕方に見られる日食よりもより地球のてっぺん(より太陽に近い側)で見られるので長く見られます。以上の条件が揃って初めて、日食継続時間も長くなります。


§日食の種類と概要

皆既日食の場合(食分1.000以上)

皆既日食模式図

月が地球に近く、月の影(本影)が地球の陸地に届いた状態で皆既日食が見られます

金環日食の場合(食分0.999以下)

金環日食模式図

月が太陽に近く月の影が地球上空で交差するため、地球上では太陽を隠し切れずに金環日食が見られます(擬本影)


〓めったに見られない金環皆既日食〓

 金環日食の図で、地球上空に月の影が交差した地点(遷移点)があります。 これがごくまれに地球上で見られることもあります。このように月と太陽の見かけの大きさが全く同じだと、金環皆既日食 [Hybrid Eclipse]と言う現象が見られます。
 ご存知のように地球は丸いです。すると、正午中心食では皆既日食が見られて明け方と夕方には月の影(本影)が地球に届かない(擬本影)金環日食になります。

 次回の金環皆既日食は2005年4月8日に東太平洋上で起こりますが、残念ながら皆既日食が見られる部分は全て海上を通過しています。皆既帯の一部では、英領ピトケアン諸島のOeno島環礁で約20秒程度の皆既日食が見られます(食分約1.004)。 
 でもここは無人島で交通が大変不便なため、こちらに行く方は皆無と思われます。唯一陸上で最初に擬本影を見られるのが、中米コスタリカの南東海岸付近です。ここはわずか9秒しか継続時間がなく、皆既日食から金環日食の遷移点が海上にあるため、金環日食が見られます。金環帯の幅は約8qで太陽高度は24度。食分は0.9978なので、全周ダイヤモンドリング状態が見られます(ビーズ日食と言う方もいます)。

 このように金環皆既日食とは全地球的に付けられた名称ですが、金環↔皆既の遷移点では金環皆既日食と言っていいと思います。ちなみに遷移点では本影の幅が0qで継続時間も0秒。食分は1.000です。こんな日食を一生に一度は見てみたいものですね。

金環皆既日食のイメージ
金環皆既日食のイメージ

金環皆既日食経路地図
金環皆既日食経路地図〔NASAから転載〕


【金環皆既日食を皆既日食で見る方法】

高度10000mにもなると皆既継続時間が約30秒伸びるようです。もし来年のコスタリカ〜パナマ金環皆既日食にフライトで観測するツアーの計画があれば、金環側でも皆既日食が見られる可能性が大です。コスタリカ南東海岸での予報が約13秒継続する金環側の日食なので、高度10000m上空だと約17秒継続する皆既側の日食が見られることになります。

日食は普通、正午中心食での皆既帯が赤道に近く、月の移動速度に合わせて地球も自転する速度が速いために日食の全ての経過時間も遅くなります。ところがコスタリカ以東で見られる日食は夕方近くなので、月の移動が早く経過します。機長の操縦は困難を極めますが、ここでフライトできるツアーがあれば参加も考えます。天候の心配もしなくていいし…。

問題は皆既側でも本影(月の影)の幅が10数`足らずなので、うまく機上から見られるかどうかが心配です。前回の南極では斜めに本影が通過するので皆既帯の幅は長く、多少機体が横に移動しても窓越しから見られたのですが…。

是非NHKでも機上の皆既日食と地上の金環日食の同時中継を検討して戴きたいのです。このカキコが今後の科学番組計画の参考になれば幸甚です。高度10000mで皆既時間が30秒も伸びるのは、とあるレポートに基づいたおおよその値なので正確な数値ではありません。普通の金環日食は高度10000mでも金環日食のままです。いずれにせよNASAから正確な値が発表されていないので、全ての数値はおおよその値に過ぎないことを御理解戴ければ幸甚です。

金環皆既日食模式図

金環皆既日食模式図:図の真ん中の月が通過するピトケアン海域では皆既日食が見られます。地球上では青〜灰色の線まで皆既日食が見られます。朝方と夕方は金環日食が見られる範囲で、灰色〜桃色の線まで金環日食が見られます。点が今回の観測地だと定義すると、その地点から高度10000mあれば皆既日食が見える範囲に到達するので皆既日食が見られます。灰色の線は皆既↔金環の遷移点で、本影の幅が0q、継続時間0秒、食分は1.000の日食が見られます。
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